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…3…



 「はい、おやつよ!」

 おかあさんが、ビスケットと牛乳を茶の間にもってきてくれたの。

 私は、いつものようによろこんで食べていたんだけど、とちゅうで思い出したの。
 おかあさんにチョコ買ってもらわなきゃ!って・・・。

 「おかあさん、おねがいがあるんだけど、いい?」
 「なぁに、新しいおもちゃならダメよ。」
 「ううん、ちがうの。
  あのね、ゆな、チョコレートがほしいの。」
 「わかった。明日のおやつはチョコにしてあげる。」
 「わーい!!」

 えっと、でも、そうじゃなくって・・・

 「ゆなね、おやつのチョコもたべたいんだけど、
  もっといっぱいほしいの。」
 「だめよ、由奈。虫歯になっちゃうでしょ?」
 「でも・・・ゆながたべるんじゃないから・・・」

 私が困った顔をすると、お母さんはニコニコ笑いながら言ったの。

 「なるほどねー。そーゆーことかぁ・・・。
  由奈もバレンタインにチョコをあげたい男の子がいるのね?」
 「うん!ゆな、好きな男の子いっぱいいるの。
  ケンちゃんにようくんにひろくんにまさくんに・・・」
 「由奈は、ケンちゃんも遥くんも比呂くんも雅之くんも、みんな好きなの?」
 「うん。だって、みんなあそぶとたのしいよ!」
 「そっかー。由奈はみんなと仲良しだもんね。」
 「うんっ!」

 由奈は大きくかぶりを振った。

 「でもね、由奈。バレンタインはそういう日じゃないのよ。」

 そう言って、おかあさんは私の頭を撫でた。

 そして、お母さんは言葉を続けたの。

 「バレンタインデーはね、本当に大好きな人に『好きです』って言うための日なの。」
 「おかあさんがおとうさんにいうみたいに?」
 「そうよ。だからチョコレートは1つしか買ってあげられないわ。
  由奈は誰のことが大好きなの?」

 そう言って、おかあさんはニッコリ笑った。

 みんな『だいすき』なんだけどなぁ・・・
 でも、おかあさんがおとうさんを『すき』なような、『すき』じゃないもんなぁ・・・

 「じゃ、ゆなチョコいらない。」





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