ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

3.解けない謎

 

第29話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 5月―。

 

 由奈は厳しい寮の規則に嫌気がさしていた。

 朝食の時間は早いし、門限は早いし、お風呂の時間は短いし、

 パジャマでトイレに行くことは禁止だし・・・・

 寮にいるかぎり、生きた心地がしなかった。

 

 お父さんにはたのめないしなぁ・・・今さら・・・

 

「そこの1年生!教科書忘れてるわよ!!」

「えっ?あ、どうもありがとうございます。」

「何考えていたの?」

「えーっと、あの・・・」

 

 ごまかし笑いするしかないなぁ・・・

 

「当ててみようか?寮を出たいんでしょ?」

「えーっ!!何でわかるんですか?」

「協力してあげてもいいわよ。」

 

 え?ホント?でも、この人誰なんだろう・・・

 

「あ、ごめん。自己紹介を忘れてたね。 私は瀬田愛里、4回生よ。

 私は2年前、あの寮から逃げたの。」

 

 彼女の話によると、この時期は寮から逃げる1年生が増えるのだそうだ。

 由奈がぼーっとしているのを見つけ、もしやと思って声をかけたというのだ。

 

「たしかに、寮を出たいとは考えています。

 でも、今お会いしたばかりの瀬田さんに協力していただく義理はありません。」

 

 ことわるのが常識よね・・・。

 だいたい協力って言ったって、牢から逃げるのとは違うし・・・

 

「まじめなのね、あなた。でも、気にすることないのよ。

 シェアメイトが欲しいって思っていたのよ、私。」

「シェアメイト・・・ですか・・・」

 

 同居かぁ・・・なら、悪くないカモ・・・

 

「ね、うちに来なさいよ。」

「はぁ・・・」

 

 愛里の強引な説得によって、由奈は愛里の部屋へ転がりこむことになった。

 

 

 

 


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