ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

3.解けない謎

 

第13話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 秋生はすでに、大学の入学金を振り込んでいた。

 娘の由奈が迷いはじめていることは、わかっていた。

 (大学へは行かないのかも知れない。)

 内心、秋生はそう思っていた。

 専門学校の授業料の振り込み期限は明日にとせまっていた。

 (どっちに転んでもいい、もう振り込んでしまおう。

 由奈には悩みたいだけ悩ませてやろう。)

 そう秋生は思い、お金を用意していた。

 

 Tururu・・・・・・

 

 電話が鳴った。内線だった。

 秋生はごくごく普通に受話器をとった。

 

秋生「はい、総務課高岡です。」

受付の女性「高岡さん、外線です。娘さんからです。」

 

 (由奈か?)

 

秋生「もしもし?」

理奈―父さん、私よ。理・奈。

秋生「なんだ?夫婦ゲンカでもしたのか??」

理奈―私たちは仲良くしてます。父さん、由奈の進路は決まったの?

秋生「いや、もう少し、時間がかかると思う。

   あの娘があんな風に悩むとは思わなかったが・・・」

理奈―そうね。でも・・・

秋生「友達の女の子が毎日のように来てくれても、ちっとも元気にならんので

   心配だったんだが・・・・・・。幼なじみっていうのは違うんだな。

   成宮さんちの遥くんが心配して励ましに来てくれてな。」

理奈―遥くんかぁ・・・

秋生「彼がきてくれるようになってきてから、少しずつ落ち着いてきたんだ。」

 

理奈(遥くんかぁ・・・父さんは何も気づいてないのかしら?

   ただの幼なじみじゃないと思うけど・・・)

 

理奈―父さん、授業料の降り込みのしめきり日はいつなの?

秋生「明日までだよ。明日は忙しくてな、振り込みに行く時間がないんだ。

   今から銀行へ行こうと思っていたところだよ。」

理奈―父さん、もう1日待って。専門学校へそのまま行くようだったら、

   振り込みは私がするから・・・・・・。

秋生「しかし・・・・・・」

理奈―お願い。

   

 

 秋生は考え込むように少し黙り込んだ。

 (理奈のことだ。下手をすると由奈を急かしたり、叱ったりしてしまう

  かもしれない。)

 そう思ってやむなく理奈の要求を飲むことにした。

 

秋生「わかった。だけど無理に答えを急がせたりはするなよ!!」

理奈―わかってます。それじゃ。

秋生「またな。」

 

 受話器を置いた秋生は、深呼吸をして仕事に戻った。

 由奈や理奈の心配ばかりをしていられるほど、秋生の仕事は暇ではなかった。

 

 理奈は、(遥くん由奈をたのむよ)と空を見ながら祈った。

 

 

 

 

 


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