ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜
3.解けない謎
第11話
Writer:星野さゆる
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その日の夕方、珍しく遥が由奈のところを訪ねてきた。 遥「由奈、少しは落ちついたか?」 由奈「・・・・・・」 遥の優しい声に、由奈は言葉を失っていた。 遥「おじさんから聞いたんだけどさぁ、何も食べないし、眠ってないって本当か? そんなに自分を責める必要があるのか?」 由奈は遥の言葉で我慢ができなくなり、泣き叫んだ。 由奈「よーうー!!」 そして遥に抱きついて離れなかった。瞳からは大粒の涙が転がっていた。 遥「由奈、かわいそうに・・・」 遥はぽつんとつぶやき、彼女の頭を抱え込むように抱き寄せた。 どのくらいの時が流れたのだろう。由奈はピクリとも動かなくなっていた。 遥はこんな時の由奈が、必死に涙をこらえていることを知っていた。 それだけふたりのつきあいは長かった。 遥「由奈、ガマンしなくていいよ。オレの前でまでムリするなよ!」 遥は熱っぽくうったえた。 しかし、そう言いながらも、涙を必死でこらえているけなげな姿の彼女が 遥は好きだった。 由奈の強いところが好きだった。 しばらくして、由奈は遥の胸にうずめていた顔をあげた。 由奈「遥、ごめん・・・もう大丈夫、心配ばっかりかけて・・・」 遥「そんなのどうでもいいよ。ホントに大丈夫か?」 由奈「うん。あっ!遥の服びしょ濡れ・・・」 遥「あ、うん・・・」 由奈「あ、そうだ!洗っちゃうからさぁ、父さんのシャツに着替えてよ。」 遥は少し後ずさりしながら言った。 遥「いいって・・・」 由奈「乾燥機があるからすぐ乾くわよ!ねっ。」 遥「大丈夫だって。これくらい・・・だいたいばぁちゃんが・・・。」 遥は逃げはじめる。 由奈「ダメよ!よこしなさい!! 何でもおばあちゃんにまかせてるようじゃ、川崎になんて行けないぞぉ!」 由奈は追いかける。 遥「言ったなぁ・・・」 由奈「だーってホントのことじゃない・・・・・・」 ふたりはしばらくの間、子供に戻ったように無邪気に追いかけっこをしていた。 由奈は久しぶりに心から笑っていた。 |
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