ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

3.解けない謎

 

第9話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 真奈実の告別式が終わって数日後。

 由奈はまだ悪い夢を見ているような気がしていた。

 残酷な現実を受け止めることができず、夢遊病のように家を歩きまわり、

 涙を流し続け、まるで気がふれたかのように泣き叫んでいた。

 

由奈「母さん、どこ?」

理奈「由奈・・・あんたのせいじゃないんだから、自分を責めないで!!」

 

 由奈の体を揺さぶりながら、理奈は由奈に話しかける。

 

理奈「母さんはもういないのよ。遠いところへ行ってしまったのよ。

   でも・・・・・・」

 

 理奈は涙をこぼしながら、由奈を現実に引き戻そうとしていた。

 

由奈「母さんは、私が殺したのよ・・・・・・」

 

 力なく、ぺたんと座りこむ由奈。

 

理奈「違う!あんたは・・・間違ってる!!これを見なさい!!」

 

 理奈は一通の手紙を由奈に差し出した。

 それは、生前の真奈実が書いた由奈への手紙だった・・・

 

 ―由奈、あなたは何でも自分で背負いすぎるわ。

  母さんには何でも話してちょうだい。

  あなたは間違ったこともたくさん知っているわ。たぶん・・・。

  ごめんね。苦しませてしまっているわね、母さんが。

  本当のことを知れば、苦しまずにすんだのに。

  隠していた私が悪かったの。許してちょうだい。

  母さんは誰も傷付けたくなかったのよ。―

 

 手紙は書きかけのまま、そこで終わっていた。

 

 

理奈「母さんは、私を苦しめないためにあなたに真実を話せなかったんでしょう。

   そして、私よりもずっとずっとあなたを愛していたのよ。

   だから・・・由奈、あなたには活き活きと目を輝かせて生きて欲しいのよ。

   そうじゃなきゃ、私の存在は・・・」

 

 理奈は涙でむせかえって話せなくなってしまった。

 が、涙でむせかえる理奈とは対照的に、由奈の頭は次第にはっきりとしてきた。

 

由奈「姉さん、何を知っているの?もしかして・・・」

 

 理奈は涙をふくと、遠くを見るようにして話しをはじめた。

 

理奈「昔から、なぜなんだろうって思っていたのよ。

   父さんも母さんもA型なのに、私はAB型なのよ!由奈もA型だし・・・

   もらわれてきた子なんじゃないかって疑っていたのよ。」

由奈「・・・・いつから・・疑っていたの?」

理奈「中学生くらいの頃からよ。でも、その謎が解けたわ。

   私の実の兄があらわれたんだものねぇ。」

由奈「佐藤 亮・・・・ね。」

理奈「そう。私、自分が誰の子供なのかわかってすっきりしたの。」

 

 立ち上がり、爽やかな表情で窓のそばまで歩いていく理奈。

 由奈にはすっきりしたという、理奈の気持ちがわからない。

 

由奈「でも、どうして?」

 

 窓の外の空を見つめながら理奈はこたえる。

 

理奈「だから、結婚に踏み切れたのよ。雅人さんのプロポーズに応えられたの。

   由奈が彼のことを好きだっていうのはわかってたから、

   それだけがひっかかってたの。

   でも、わかったからには家を出るチャンスだと思って・・・。」

由奈「なぜ?」

理奈「ずっと育ててもらったことは、父さんにも母さんにも感謝してたよ。

   だけど・・・だけどこれ以上迷惑をかけたくなかった。特に父さんにはね。

   そりゃぁ、母さんは実の母でしょうけれど、

   父さんは血のつながりのない人なのよ!!だから・・・」

由奈「姉さん、知ってしまったなら仕方ないけれど、

   母さんはそのことを姉さんに知られるのを怖れていたわ。

   だから、そのことは忘れてちょうだい。お願いだから・・・」

 

 理奈の手を握りしめて由奈は言う。

 

理奈「わかった。でも、由奈も約束して。元気になるって・・・」

由奈「時間をちょうだい・・・もう少しだけ。」

 

 

 

 


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