ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜
3.解けない謎
第8話
Writer:星野さゆる
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由奈「その時、姉さんは母さんのおなかの中にいたのね。」 真奈実「えぇ・・・・・・。産むつもりは全くなかった。 でも・・・秋生さんが・・・言ってくれたのよ。 『僕の子供として産めばいいよ』って。 出会ってから1ヶ月もたっていなかったのに。 由香梨と彼がつきあっていたことを知ったのは、その後だった。 私には由香梨の想いを止められなかった。 ふたりの恋の邪魔者は私なんだって思った・・・ずっと悩んだわ。」 由奈「母さん・・・」 由奈は真奈実の気持ちを思うと胸が痛かった。 真奈実「その頃から菜美と私は仲が悪くなったの。 菜美には、由香梨との不倫を認めている私が許せなかったんだと思うわ。 由香梨は、友情が崩れて、壊れていくことを嘆いて・・・ 子供を産んですぐに死んだの。薬を飲んで・・・。」 真奈実は涙を流しながらも話を続けた。 真奈実「由香梨の子供はもちろん私がひきとった。 産まれて1ヶ月もしないうちに死んでしまったけれど。 キレイな子だった。 由香梨によく似た、ほりの深い睫毛の長い男の子だったわ。」 由奈「それじゃ、私は・・・?」 由奈は少し混乱していた。自分はいったい何者なのだろうかと。 真奈実「由奈、あなたは正真正銘、父さんと母さんの娘よ。たったひとりの。 でも、理奈には言わないでちょうだいね。 理奈がいたから、あなたを産むことができたから。父さんとの・・・・」 由奈は真奈実の真剣な表情に、これが真実だと感じた。亮の言葉は嘘だと。 そして、真奈実が死を感じて全てを話してくれたのだと、今更ながら気づいた。 由奈「ちがうよ、母さん。父さんは母さんを愛していたから・・・ 弱気になっちゃダメ!!」 そう言って由奈は真奈実の手をギュッとにぎった。 その瞳からはぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちていた。 真奈実「由奈・・・・・・」 全てを話し終えた真奈実の意識がそのままなくなった。 由奈「母さんっ!!」 そのまま真奈実は瞳も口も開かなかった。 由奈はただただ泣き崩れた。 その涙はいつまでたっても止まらなかった。 |
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