ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

3.解けない謎

 

第2話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 受話器を置いた由奈は、何かを、誰かを忘れているような気がした。

 

 その頃智菜は、由奈へ電話をする勇気が出せず、ただうろうろと家の中を歩き

 まわるばかりだった。

 

 Tururu・・・ Tururu・・・

 

 由奈が次はリカへ電話をかけようと思ったその時、置いたばかりの受話器が

 再び音をたてたのだった。

 

由奈「はい、高岡です。」

リカ―由奈、おめでとう!・・・長かったでしょう、この1年。お疲れさま。

由奈「そうねぇ。色々あったしね。でも、みんなの励ましがなかったらここ

   までこれなかったと思う。居眠りしちゃったこといっぱいあったのに、

   リカや佳代がノートとっててくれたり、

   入試の時だってみんながくれたお守りが支えになったよ!

   とにかく、いっぱいいっぱいありがとう!!」

リカ―・・・もう、会えないのかな?

由奈「3月にみんなで集まろうよ。大学は川崎だから、たぶん引っ越すと思うの。

   そうなると、東京へはあまり行けなくなると思うから・・・

   みんなにお礼もいいたいし、会っておきたいから。」

リカ―本当に大学に行く決心がついたんだね、よかった。

   みんなの予定が会う日に集まろう!そのことは私にまかせといて!!

 

 

 そのあと由奈にもう1本の電話があった。

 秋山由衣だった。

 

由衣―おめでとう、由奈。成宮くんと同じ大学なんだね。

由奈「ありがとう。同じ大学になって私もビックリしてるの。」

由衣―こんな時になんだけど、最近智菜の様子がずっと変なの。何か聞いてない?

由奈「智菜・・・・・・もしかして・・・?」

 

 そう聞いた由奈は、すぐにあの夏の日のことを思い出した。

 

由衣―やっぱり何かあったのね。智菜、秋頃から短大の方も休みがちだし、

   仕事もしてないみたいで、家に篭ってばかりなのよ。

   秋のドラマまではやっていたんだけど・・・・・・。

由奈「・・・・・関係あるかどうかはわかんないケド、私、智菜とケンカしたの。

   今考えればくだらないことで、私も悪かったんだけど。

   私、色々な事でスイスイ成功していく智菜が、うらやましかったの。

   仕事も勉強も恋愛も・・・。彼女は全てを手に入れていたから・・・・・」

 

 (私もそうだった。

  智菜がうらやましかった。ねたましいとさえ思ったこともあった。)

 

 由衣は叶わなかった和馬への恋のことを思い出していた。

 

由衣―わかるよ、その気持ち。私も思ったことあるもん。でも、由奈?

由奈「ん?」

由衣―あのままの智菜、私見てられないの。だから・・・

   もしも智菜があなたを訪ねて行った時は仲直りしてあげて。それじゃぁ。

由奈「待って、由衣!」

 

 しかしそれっきり受話器は何もしゃべらなかった。

 

 

 

 


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