ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

3.解けない謎

 

第1話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 その日は快晴だった。

 智菜はなにげなく新聞をめくっていた。

 そこには大学の合格者の名前が連なっていた。

 

 (どこの大学かなぁ?)

 

 智菜は昔のことを思い出していた。

 あれは、高校2年生の春の日だった。

 

智菜「由奈、進路決めた?」

由奈「うん、一応。今のところは藤智大学を目指すつもり。」

智菜「そっかぁ、大学かぁ・・・。」

由奈「智菜はどうするの?女子大とか?」

智菜「ママもパパも進学しろってうるさいから、最初はそれも考えたんだ。

   でも、私あんまし勉強好きじゃないし・・・

   だから四年行くことないかなって。短大とか、いいと思うんだ。」

由奈「そだね、短大で資格をとって就職ってのもいいかもね。」

智菜「資格かぁ、考えてなかった・・・・」

由奈「もう、智菜ったら必ずどっか抜けてるんだから・・・・

   資格は取れる学校選ばなきゃだめだよ。」

智菜「由奈は何しに大学へ行くの?」

由奈「・・・・・本当は私、お医者さんになりたいんだ。

   でも、私の成績じゃ無理っぽいからさ。誰にも内緒だよ。」

 

 (由奈、成績が下がっちゃって、結局医大は受けなかったんだよなぁ・・・)

 

 そう思いながらも、智菜は無意識のうちに由奈の名前をさがしていた。

 あるはずもない由奈の名を・・・・・・。

 が、【高岡由奈】の名がきちんと載っていた。

 

 (まさか・・・受けていたの)

 

 智菜は困惑した。

 そしてそのまま全員の名を見ていった。

 すると、なんと、遥の名もあったのだ。

 

 (どうなっているの?)

 

 智菜は夏以来、由奈と会っていなかった。

 そう、あのケンカ別れしてしまった日以来。

 だから、何もわからなかったのだった。

 

 

 

 

 

 一方、由奈は・・・

 

 由奈は遥の名が新聞にのっていることに驚き、受話器を手にとった。

 由奈は遥が医大を受験したことすら知らなかったから。

 

うめ「はい成宮。」

由奈―由奈です。おばあちゃん。

うめ「由奈ちゃんかい。合格おめでとう。これで未来の由奈ちゃんは美人女医さんだね。」

由奈―やだなぁ、おばあちゃん。それより、遥いますか?

うめ「ちょっと待っておくれ。ヨウー、遥やー!!」

遥「なんだよばあちゃん」

うめ「由奈ちゃんから電話じゃよ。」

遥「何?」

由奈―『何?』じゃないわよ。どうして医大なんて受けてんのよ!!

遥「いいだろ。オレの自由。由奈に指図されたかないね。」

由奈―だって、無謀すぎるじゃない。

遥「そうかな?」

由奈―そうよ!!まったく。落ちたらどうするのよ。

遥「うちに来ないか?」

由奈―どうして?話がズレてるわよ!

遥「ささやかなお祝いってとこ。大勢でやるよりいいだろう?」

由奈―そうねぇ。でも、遥・・・

遥「何?」

由奈―私の気持ち、変わってないよ。

遥「バーカ!!オレたち幼なじみだろう。

  純粋に合格を祝おうと思ってるだけに決まってんだろ。」

由奈―うん。

 

 口ではそうは言ったものの、本当は由奈に振り向いて欲しかった。

 だからこそ自分の学力では合格の可能性のかなり低い同じ大学を受験した。

 同じ大学に通って、少しでもそばにいるために。

 しかし、その想いは由奈には届いていなかった。

 

 

 

 


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