ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

3.解けない謎

 

第3話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 

 由奈は久しぶりに成宮家のチャイムを押した。

 

 ピンポーン

 

うめ「はいはい、由奈ちゃんじゃろ。入りなさい。」

 

 閉まったままの扉の向こうから、うめの元気な声が響く。

 

由奈「それじゃぁ、おじゃましまーす。」

 

 由奈が遠慮なく扉を開くとうめが立っていた。

 そして由奈と確認もしないうちに、

 

うめ「よーぉやぉーい!!」

遥「ばあちゃん、聞こえてるって・・・」

 

 面倒くさそうに、遥も玄関に出てくる。

 

遥「とりあえず、あがれよ。」

 

 そう言って遥は自分の部屋へと引っ込んでいく。

 それを追いかけるようにして、由奈も遥の部屋へ・・・・。

 

 

 

由奈「とりあえず合格おめでと!」

遥「あ、ありがと・・・・」

 

 遥ははずかしそうに背中を向けたままで答える。

 

 江ノ島での抱擁とキス・・・・・

 そして駆け出して帰ってしまった、由奈。

 あれからずっと、お互いにお互いをさけていた。

 

 遥としては、恥ずかしかったし気まずかった。

 なのに、由奈は何事もなかったかのように『おめでとう』を言いに来たのだ。

 

 もちろん由奈にも複雑な気持ちはあった。

 だが、今の遥にはその気持ちが読み取れない。

 

由奈「でも、びっくりしちゃった!」

遥「あ、秘密にしてたからなぁ・・・・」

 

 遥は意を決して、由奈の方へ振り向く。

 

遥「しっかし、本当にお前はいつも変わってるよなぁ。せっかく1年通った学校、

  やめちゃうんだろう?」

 

由奈「うん。」

 

 由奈の表情に乱れはない。

 由奈の中では、自分はもう幼なじみ以外の何者でもないのだろうか?

 それなら・・・・・・遥の心は揺れる。

 

由奈「それにしても、遥・・・

   どーせなら、補欠合格なんてカッコ悪いのはやめなさいよぉ」

 

 いつものようにカラカラと笑う、由奈。

 

遥「オレは受かっただけで奇跡なんだから、それでいいのっ!!」

由奈「あっ、そう。」

 

うめ「やっぱり由奈ちゃんが来ると、家(うち)がぱぁーっと明るくなるのぉ。」

 

 遥は由奈と向き合うだけで精いっぱいで、

 うめが後ろをついて来たことにも気づかなかった。

 

由奈「そうですかぁ?」

 

 由奈は由奈で久々に遥と向き合い、気まずい時間を作ってはいけないと

 必死だった。だからうめがいることで救われた気分だった。

 

うめ「そうじゃよ。遥はいつもは暗い男でなぁ。」

由奈「そうなの?」

 

 由奈は不思議そうに遥の顔をのぞきこむ。

 

遥「ばぁちゃん、勉強中はヘラヘラできないだけだよぉ。」

 

 反論もむなしく、うめは台所の方へと方向転換したあとだった。

 

由奈「遥、部屋入っていい?」

 

 ドアノブに手をかけながらも、不安そうに遥の顔を見る由奈。

 遥はやっといつもと違う由奈に気づいた。

 

遥「片付けてないぞ!」

由奈「わかってるよ!そんなこと。」

 

 しかし、由奈は遥のOKをもらう前にドアを開けていた。

 

由奈「うっわ〜!!何コレ〜!!」

遥「だから片付いてないって言っただろう?」

 

由奈「だけど、足の踏み場くらい残しといてよねぇ、まったく。」

 

 由奈はさっさと自分の座る場所を確保するべく、片づけをはじめる。

 その時台所の方から声がした。

 

うめ「ようや、お茶が入ったよ。おいで!!」

遥「だってさ。」

 

 遥はひとこと言うと台所へと向かって階段を降りていく。

 そのあとを追うように由奈も階段を降りていく。

 ふたりは半ば強制的にうめの部屋へと連れていかれ、3人で大学合格を祝った。

 

 

 

 


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