ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第33話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 由奈は泣きじゃくりながら話しはじめた。

 

由奈「智菜がね、会う約束してたのに、男と遊んで寝坊して、約束におくれて

   きたの。」

遥「男と遊ぶって?」

由奈「つまり、恋人と・・・よ。」

遥「でもそれがどうして友達失ったになるんだ?」

由奈「智菜から会おうって誘ってきて、

   こっちは補修さぼって約束の場所へ行ったのに・・・

   あんまりじゃないの!」

 

 (片瀬さん・・・男・・・なんかピンとこないなぁ・・・)

 

 由奈はだんだん興奮してヒステリックに話すようになっていた。

 

由奈「もう仲直りなんてできない。私、最悪のこと言ったから。

   『恋人と友達のどっちを選ぶの』って・・・・」

 

 そして言い終えると、机につっぷした。

 

 

 

遥「なぁ、由奈。明日、何か用事はあるか?」

由奈「特にないけど・・・」

 

 答えながら、由奈は顔を上げる。

 

遥「じゃ、海へ行こうぜ。ほら、昔よくオレが行ってたおじさんの家が

  江ノ島だからさ。今年も好きな時に来いって言われてたんだ。

  浪人生にも息抜きは必要だから・・・って。」

由奈「でも、私まで行ったらそのおじさんに迷惑じゃない?」

遥「たとえ1ヶ月いたって、わかってくれるおじさんだよ。

  オレのよき理解者だからなぁ。お前も1泊くらいなら大丈夫だろう?」

由奈「まぁね・・・。勉強ができる場所なら。」

遥「じゃ、明日朝5時30分出発だぞ!!」

由奈「うん。」

 

 (ありがと、遥・・・・・)

 

 由奈は遥の心づかいがうれしかった。

 

 

 

 

 

 

  次の日、海で・・・。

 

 桟橋のそばに来たところで、由奈は話をはじめた。

 

由奈「遥、私ね・・・わかっちゃった。私、遥のこと好きなんだよ。

   でも・・・私にはやり直すなんてできない。

   恋人としてなんて・・・できないよ。」

 

 遥の顔色が変わった。

 

遥「なぜ?」

 

 遥の変化に気づいて由奈は少しためらう。

 

由奈「それは・・・」

 

 しかし遥は由奈に詰め寄り答えを求める。

 

遥「それは?」

 

 由奈は目をつぶって体から言葉を吐き出す。

 

由奈「好きだから、ダメなの・・・・・・」

遥「どうして?」

 

 遥は理解できないという表情(かお)で由奈に詰め寄る。

 

由奈「理屈じゃ・・・ないよ。

   でもやっぱり、たよれるのは遥だけなの・・・・・・」

 

 由奈の瞳からは大粒の涙が溢れた。

 

遥「由奈・・・」

 

 (由奈・・・俺は・・・・・)

 

 ふたりは抱き合い、唇を重ねた。

 しかし、恋人には戻れなかった。

 

 

 

 

由奈「今日は本当にありがとう。少し元気出たよ。」

遥「待てよ、由奈・・・」

 

 由奈はそれだけ言うと、駅へ向かって走り出した。

 遥は走って追いかけたが、由奈はひとこともしゃべらず電車へ乗り込んだ。

 

 (ごめんなさい、ごめんなさい、遥・・・・・)

 

 

 

 


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