ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第31話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 時は飛ぶように過ぎた。

 毎週の模試、そして検定試験。

 由奈は忙しかった。

 

 

 そして8月、夏休み―。

 智菜は久しぶりに3日連続のオフだった。

 そしてその貴重なオフを利用して、由奈と遊ぶ約束をしていた。

 

由奈「おそいなぁ、智菜。」

 

 長い髪をまとめ髪にした由奈は、もう1時間も駅前のベンチに座っていた。

 『もしかしたら、急に仕事が入っちゃったのかなぁ?』

 由奈がそんなことを考え始めたその時、

 こちらに向かって走ってくる若い女性の姿が見えた。

 智菜だった。

 

智菜「ごめーん、由奈」

由奈「仕事でも入ったの?忙しいんでしょ?」

 

 智菜は首を横に振って言った。

 

智菜「ごめんなさい。寝坊しちゃって・・・」

由奈「昨夜(きのう)も仕事でおそかったんでしょ?」

智菜「違うの。だから、本当にごめんなさい。」

由奈「じゃ、何なのよ?」

 

 智菜は耳打ちするように言った。

 

智菜「今日、朝帰りだったから。」

由奈「へ?」

智菜「だから、和馬くんの部屋に泊まったの!!」

由奈「何で?」

智菜「あ、由奈にはまだ話してなかったっけ?私たち、つきあってるの。」

由奈「ふーん、そうなんだ。」

 

 ひしひしと由奈の怒りが伝わってくる。

 

智菜「う、うん。」

 

 (どうしよう、かなり起こってるよ、由奈・・・)

 

 そして、ふたりの間にしばらく沈黙が続いた。

 

 

 

 先に口を開いたのは由奈だった。

 

由奈「私たち、これからも友達としてやっていけるのかなぁ?」

智菜「そんなっ!!」

由奈「私、もうあなたがわからない。

   恋人といっしょにいたいのはわかるケド、約束は守ってよ。

   だいたい、智菜が会おうって言ったのよ。

   私だって・・・忙しいんだからっ・・・」

智菜「だから、ごめんなさいって言ってるのに。」

由奈「智菜が時間にルーズなのはわかってるけどね、

   私だってやることたくさんあるし、この時間にここに来るのは大変なの。

   でも、久しぶりに会えると思って1時間前にきちんとここに来た。

   けど、その時智菜は恋人といちゃついてたんでしょ。そして遅れて来た。

   私、学校と大学受験の両方の勉強で忙しいの。

   智菜がそんな風なら、私帰るよ。」

 

 由奈は言うだけ言うと、家へと向かって歩き出した。

 

智菜「待って!!」

 

 怒っている由奈に智菜の声は届かなかった。

 

 

 

 


Copyright 2004 立川ナツキ&星野さゆる. All rights reserved.

Never reproduce or republicate without written permission.