ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第30話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

多恵子「えっ?由奈って大学受験するの?」

由奈「一応ね。夢が捨てきれなくって・・・・・・」

清香「夢って?」

由奈「私、小児科医になりたいの。でも、成績悪くなっちゃって・・・

   去年は医大の受験できなかったの。

   その上、ほかのとこも落ちちゃったしね・・・・・・

   でも、今年はがんばれる気がするんだ。」

清香「そうなんだ。で、ご両親は?」

由奈「好きにしろって言ってくれてるよ。」

佳代「じゃぁ、私たちとも1年だけのつきあいかもね。」

由奈「そうだね。でも、まだわかんないよ。」

リカ「由奈、大学受験を決めたのって、みちるくんと別れてからだよねぇ。」

由奈「そうかなぁ?」

リカ「そうだよ。やっぱり遥くんのところに戻った方が・・・」

 

由奈「ちがうっ!!それはちがうよ。」

 

 リカの声を由奈のするどい声がさえぎった。

 

由奈「そりゃぁ、みちるくんと別れたのは正解だったけど、

   今はもっと強くなるための修行の時なの!」

多恵子「私は修行よりも『オロナミンC』の方が好きだけどなぁ・・・」

リカ「多恵子ぉ・・・」

 

 

 

 

 

 その日、由奈は久しぶりに成宮家を訪れた。

 

うめ「あらあら、由奈ちゃん。遥なら買い物に出てるよ。」

由奈「そうかぁ。なら部屋で待ってます。」

うめ「お茶は何がいいかい?」

由奈「ん〜、じゃ、アップルティーお願いしまーす。

   あ、おばあちゃん。これ多恵ちゃんからあずかった手紙だよ。」

 

 そう言って由奈はうめに手紙を手渡した。

 

うめ「ありがとよ。」

 

 由奈は勝手に歩いて遥の部屋へと行った。

 

うめ「遥もこれで元気になるかのう・・・」

 

 うめはひとりでつぶやいた。

 

遥「ただいま、ばぁちゃん!」

うめ「由奈ちゃんが来とるよ。」

遥「ばぁちゃんもしかして、勝手に俺の部屋に通したのか?

  まったく、もう・・・・・・」

 

 なーんてぶつぶつ言いながらも、遥だってまんざらでもなさそうだ。

 

 

 

 

由奈「元気?」

遥「お前って、ホントいつも突然だよなぁ。」

由奈「そうかなぁ・・・」

遥「大学のことだってそうじゃないか。」

由奈「そうでもないよ。ずっと考えていたことなの。

   決定できなかっただけで・・・」

遥「明日は模試だろ。勉強しなくていいのか?」

由奈「その前に、遥に会っておきたかったの。」

 

 遥は一瞬黙ったが、言葉を続けた。

 

遥「由奈、お前、何言ってるかわかってんのか?」

由奈「わかってるつもりだよ、私。

   『お互いにがんばろう!』って言いたかったから・・・」

遥「オレはお前のこと好きだよ。今でも。やり直せないのか?」

 

 由奈はうつむいて黙り込んだ。

 しばしの沈黙があって、由奈は顔をあげた。

 

由奈「今の私には、そんなことできないよ。」

遥「じゃ、由奈の気持ちが変わるまで待つよ・・・・・・」

由奈「ダメだよ。遥をそんな風にしばれないよ。」

遥「なら、もう会わないようにしようぜ。

  オレ、耐えらんないよ。こんなのって。」

 

 遥は由奈から顔をそむけ、口をむすんで涙をこらえた。

 由奈は黙ってうなずき腰をあげ、その場を去った。

 

 

 

 


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