ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第27話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 成宮家では・・・。

 

 4月に長男の信一が浪人生活にピリオドを打ち、仙台の大学の文学部へと入学。

 そしてひとり暮らしをはじめた。

 

 長女の瓔子はといえば、恋人である浜崎純と交際3年目に入ろうとしていた。

 お互いに結婚を意識しはじめていたが、金銭的なことを考えるとそうもでき

 ずにいた。

 

 そして遥はといえば、麻人から届いた知らせに驚いていた。

 【夕里が流産した】との・・・。

 

 

 

うめ「遥や、お夜食だよ。

   ばぁちゃん特製おにぎりとばぁちゃんの煎れたおいしーいお茶で

   ひと息いれなさい。」

遥「あ、ばぁちゃん、ありがと。」

うめ「ところであんた、由奈ちゃんとケンカしたのかい?」

 

 おにぎりを乗せたお皿を遥の机のはしに置きながら、うめは切り出した。

 

遥「何で?」

うめ「最近由奈ちゃんがうちに来ないからねぇ。」

遥「由奈だって東京の学校へ通っているんだ。忙しいんだろう?」

うめ「それにしてもねぇ・・・

   多恵ちゃんと同じクラスらしいケドねぇ、

   多恵ちゃんはよく遊びに来てくれるよ。」

遥「ばぁちゃん、するどいなぁ。でも多恵ちゃんって誰だよ?」

うめ「多恵ちゃんはね、SMAPファンの仲間じゃよ。

   それにしても、私を誰だと思ってるのかい。おバカ!」

 

 遥は深くためいきをついた。

 

遥「由奈はもう、オレが家にいる時には来ないと思うよ。」

 

 そういって遥はうつむいた。

 

うめ「そうかい。

   せっかくいい娘が嫁に来てくれると思っていたんだけどね・・・・・・」

 

 遥には返す言葉がなかった。

 

うめ「何でそうなっちまったんだい?」

遥「オレ、ふられたんだよ。理由なんてわかんないよ。

  ただ・・・あいつは、由奈は・・・別の男とつきあってる。」

 

 遥はそれ以上何も言わなかった。

 うめは孫の辛そうな顔がみていられなかった。

 逃げるように台所へと戻っていった。

 そして、聞くんじゃなかったと思った。

 

 

 

 しかし・・・

 遥とうめがそんな話をした、次の日のことだった。

 由奈から遥へTELがあったのは。

 

由奈―もしもし?遥?

遥「由奈・・・なのか?」

由奈―うん。一応言っとこうと思って。私・・・

遥「大っキライ!・・・とか言うの、ナシだぞ!」

由奈―まじめに聞いてよ!

遥「わかった。」

由奈―あのね・・・

 

 ふたりの間に緊張がはしる。

 

由奈―みちるくんと別れたよ。

遥「・・・・・・」

 

 いきなりのことで遥は言葉が出ない。

 頭の中が真っ白になり、何が起こったのかわからなくなる。

 

由奈―遥、ちゃんと聞いてる?みちるくんと別れたって言ったのよ!!

遥「お前、どうしてそれを・・・」

 

 遥はなんとか気持ちを落ち着かせ、言葉を続ける。

 

由奈―遥にだけは言っとかなきゃならない気がして・・・

遥「ありがとう。報告してくれて。」

由奈―今年は大学受験がんばってネ。実はね、私も受験勉強してるんだ。

遥「え?でもお前、専門学校は?」

由奈―こっちもがんばってるよ、もちろん。あっ、ごめん。キャッチ入った。

   じゃ、またね。

 

 うめに色々聞き出され、余計に落ち込んでいた遥だったが、

 由奈からのTELですっかり元気になってしまったのだった。

 

 

 

 

 

由紀「遥くん、めずらしいわね。こんなに早く。」

遥「あぁ、ちょっとした心境の変化。」

由紀「由奈と仲直りでもしたわけ?」

遥「まぁ、そんなとこ。」

 

 遥は由紀を軽くかわすと、一番前の席へと座った。

 

由紀「ちょっと、遥くんってば・・・・・・」

 

 その日からの遥は、まるで人が変わったかのように勉強をはじめた。

 そんな遥の姿を見ながら、由紀は思った。

 『もう私が励ます必要はなくなったみたいね、遥くん』と。

 そして予備校をやめ、フリーターになった。

 

 

 

 


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