ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第28話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 智菜は連ドラの撮影を終え、秋からのドラマの撮影に入っていた。

 といっても・・・ ほとんどが2時間半の単発もの。

 連ドラの撮影とは違ってロケも多かった。

 

 8月には舞台に立つことも決まっており、

 【短大→撮影→短大→舞台稽古・・・】という日々が続いていた。

 

和馬「智菜さん、本当にオレたちこのままでいいんですか?」

智菜「その【さんづけ】やめてよ。そろそろ・・・。」

和馬「でも・・・オレに会ってる暇があったら、

   睡眠をとった方が・・・・・・。」

智菜「ホントに変わったわよね。

   はじめて会った時は学校をさぼってばかりの問題児で・・・。」

 

 智菜は昔を思い出しながら、笑う。

 

智菜「今はきちんと働いてるし、がんばってるんだから。」

和馬「・・・」

智菜「何も気にしなくていいよ。

   私は仕事している時間よりも君といる時間の方が好きなんだから。」

 

 その時マネージャーの伊集院が飛び込んできた。

 

「智菜ちゃん!仕事、仕事!!」

 

 ここは和馬の部屋。と、言っても部屋の名義は伊集院。

 

 和馬は最近、智菜のマネージャーの伊集院と暮らしはじめた。

 智菜がスキャンダルにまきこまれるのをおそれた伊集院が、

 色々考えた末にいっしょに暮らすことを和馬に提案したのだった。

 

 その方が智菜と会える・・・ということもあったが、

 和馬の給料でひとりで暮らすには協力者が必要だったのだ。

 

 

 伊集院は社長兼マネージャーである。

 数人の役者と歌手をかかえるプロダクションの社長なのだが、

 自分が特に目をつけてスカウトした智菜については、

 ひとりで全ての面倒を見ている。

 おかげで事務の方がはかどらなくなった。

 そのため和馬を事務員として雇った。

 (もちろん和馬を雇ったのは、智菜とのスキャンダルを恐れてのことだったが)

 

 和馬には、自宅兼事務所のマンションで事務をさせている。

 和馬の仕事のほとんどは、前日に伊集院が指示した雑用だったが、

 今の伊集院にとってはそれだけでも強力な助っ人だった。

 

伊集院「和馬クン、悪いケド智菜ちゃんが20歳になるまでは

   ここ以外の場所で彼女に会わないでくれよ。」

智菜「どうしてよ、伊集院さん。」

 

 智菜は伊集院に詰め寄る。

 

伊集院「あのねぇー・・・智菜ちゃん。

   いつまでも素人じゃないんだからさぁ、少しは自覚もってよね。

   君は芸能人なんだからね・・・

   いつマスコミが見てるかわからないんだから。」

智菜「でも、私・・・・・・」

伊集院「わかってる。会うなとは言わないよ。

   だけど・・・長時間いっしょにはいられないんだ。

   僕の家だからって、僕だって男だからね。

   僕とのスキャンダルを書かれてないとも限らないしね。」

智菜「そんなにスキャンダルがこわいの?伊集院さんは」

伊集院「当たり前だろう!せっかくここまで女優として成功してきているんだ。

   大女優になってほしいんだよ。僕は!!」

智菜「ムリだよ、そんなの。私才能ないもん。」

和馬「オレは伊集院さんの意見に賛成!

   智菜さん、オレもがんばるから、がんばってよ。」

智菜「わかった。和馬くん・・・ありがと。」

 

 そう言って智菜は和馬の顔の前で瞳を閉じた。

 和馬はいつものように、智菜と唇をあわせた。

 

 ラブラブ、甘甘な空気で部屋はつつまれた。

 

伊集院「あのー、おふたりさん。僕がいること忘れてない?」

 

 ふたりは真っ赤になった。

 

 

伊集院「智菜ちゃん、さぁ仕事だよ!!」

智菜「今日は何だっけ?」

伊集院「今日は、えーっとねぇ・・・取材2つと秋からの連ドラの打ち合わせ。」

智菜「秋からの連ドラ?」

伊集院「そーなんだよ。昨日突然決まってねぇ。」

 

 言いながら、スケジュール帳をめくる伊集院。

 

伊集院「地元のCMとかなら断ったんだけどね。

   今まで【けなげな子】や【かわいそうな子】ばかりだっただろう?

   君のイメージが片寄らないようにと思って・・・。」

 

 智菜はうなずいた。

 

伊集院「でも、このドラマは、【明るい高校生】って役だから、いいと思って。

   ただし・・・少し悩んだんだけどねぇ。アイドルのコが降りた役だから。」

智菜「誰が降りた役でもかまわないよ、私。」

伊集院「よかった。それじゃ、さっそく打ち合わせに行こう。

   和馬くん、留守はたのんだよ。」

和馬「はい、わかりました。」

和馬「智菜さん、がんばって!」

 

 そして和馬は智菜のほおにキスをした。

 

 ま、そんなわけで・・・智菜はますます忙しくなるのだった。

 

 

 

 


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