ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第25話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

医師「清水さん、そしてあなたのお名前は聞いてなかったね。」

麻人「立川麻人です。弁護士を目指して法学部で勉強しています!」

医師「君たちは、同級生ってとこかな?」

夕里「はい。彼が大学へ進学するので、私もこっちに就職したんです。」

医師「そうですか。じゃ、そろそろ本題に入りますね。

   立川君、君は彼女が妊娠していたことを知っていたかな?」

 

 麻人は驚きのあまり、目を白黒させるばかりだ。

 

医師「彼が父親なんだね。清水さん。」

夕里「はい。」

医師「ふたりとも落ち着いて聞いて下さいね。」

夕里・麻人「はい」

夕里「それで、赤ちゃんはどうなんですか?先生」

医師「残念ながら・・・」

 

 夕里は泣きだした。

 出産時まで働いて産むつもりでいた。

 でも、その赤ちゃんは夕里の体の中から流れ出てしまったのだ。

 とにかく悔しく、そして悲しかった。

 

医師「立川くん、しっかり聞いてください。彼女のことを責めてはいけないよ。

   たぶん、君のことを考えると妊娠したことも言えなかったんだと思う。」

麻人「それより、せんせい、ユリは・・・夕里は・・・・・・」

医師「2、3日は安静にしてもらわないといけないよ。」

麻人「そうですか・・・」

 

 医師が病室から出て行くと、夕里は再び泣きだした。

 

夕里「麻人ぉ、ごめんねぇー。言い出せなかったばっかりに・・・

   私たちの赤ちゃん・・・・」

麻人「いいよ、赤ちゃんはこれから何度でもチャンスがあるよ。

   それより、早く元気になれよ。」

 

 そして2人は唇を重ねた。

 夕里は涙を流し続けていた。

 

 

 

 

 

   

 待合室には、夕里を救急車に乗せてくれたサラリーマンがいた。

 

サラリーマン「夕里さんの様子は?」

麻人「だいぶ落ち着きました。」

サラリーマン「よかった。」

麻人「今日は本当にご迷惑をおかけしました。」

サラリーマン「いえいえ、困っている時はお互い様じゃないですか。

    じゃ、僕はそろそろ失礼しますね。」

麻人「なんとお礼してよいやら・・・」

サラリーマン「何言ってるんですか。ご近所どうしなのに・・・」

麻人「えっ?そ、そうなんですか?」

サラリーマン「角のたばこやの隣のアパートなんですよ、僕。

    彼女とはいつも電車が同じみたいで、

    彼女はいつも大事そうにおなかをかばいながら

    駅の階段を上っていたから、もしかしたら・・・・とは

    思っていたんですが・・・・・。

    君は知ってるんだって思い込んでて・・・僕も責任感じてるよ。」

麻人「そんな・・・あいつの命に別状がなかったのは、あなたのおかげですよ。

   オレ、あいつがいなかったら・・・生きていけないから・・・・・・

   本当にあなたに感謝してます。」

 

 

 麻人は深く反省していた。

 夕里が妊娠していたことを気づいてやれなかったことを悔やみ、

 これからはもっともっと夕里を大切にしなければと心に誓った。

 6月のはじめのできごとだった。

 

 

 

 


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