ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第21話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 時は流れ、あっという間に5月になっていた。

 智菜はドラマの撮影で多忙な毎日を送っていた。

 

由衣「ねぇねぇ、智菜。『BLUE』のライブに行かない?」

智菜「あー、あの藤井和馬のバンドのライブ?」

由衣「うん。なんか気に入っちゃったんだよね、あの音楽。由紀は予備校だし、

   智菜しか誘える人、いなくて・・・・・・」

智菜「でも私、仕事があるし・・・・・・」

 

 智菜は乗り気じゃない。

 仕事と短大の両立は想像以上に忙しくて、正直あまり睡眠時間もとれて

いないのだ。

 

由衣「和馬くん言ってたケド、あんたに自分たちの音楽を認めて

   もらいたいって・・・」

智菜「そんなことしてどうするの?」

由衣「知らないケド・・・バンドのメンバーもひとクセあることはあるけど、

   いい人だし・・・。オフの日でいいから行こうよ!!」

 

 由衣があまりにも熱心なので、智菜はこたえた。

 

智菜「じゃ、久しぶりに行ってみようかな。気分転換になるかも

   しれないし・・・」

 

 智菜は由衣の熱心さに負け、一回行けば由衣もあきらめてくれるだろうと思い

 OKをしたのだったが、ライブに行った智菜は驚くことになる。

 

 

 

和馬「久しぶり、智菜さん。今日は来てくれてありがとう。」

智菜「どうしたの?その態度の変化は・・・?」

由衣「まぁ、まぁ、まぁ。智菜、和馬くんの誠意じゃない。

   あんたに音楽を『否定』されたままなのが心にひっかかってるから、

   智菜には特にていねいに接しているんじゃない。」

 

 智菜は和馬の態度に疑問符でいながらも、「BLUE」というバンドが

 確実に変わりつつあることに気づいた。

 

 

 

 

 

 そのころ東京では・・・

 夕里は悩んでいた。

 就職してまだ2ヶ月。

 

 が、夕里のおなかの中には赤ちゃんがいた。

 たよりになるはずの麻人は大学にはいったばかりの学生。

 家計を支えているのは夕里で、仕事を休むわけにもいかず、

 もちろん辞めるわけにもいかない状態だった。

 

 麻人は弁護士を目指して、日夜学業に励んでいる。

 麻人にうちあけてしまえば、麻人が働いてくれるのはわかっていたのだが、

 夕里は麻人の夢を壊したくなかった。

 だから、1番信頼している、愛している麻人にさえも

 妊娠したことを言い出せずにいた。

 

 

 

 


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