ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第15話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 3月も半ばを過ぎた頃の智菜は、取材,取材の毎日だった。

 

 4月からの連ドラ出演が決まり、撮影もはじまっていた。

 智菜の役は、小学6年生の時に車にはねられた事が原因で脳に障害を持つ少女

・・・咲也花(さやか)。

 はじめてのドラマ出演にしては難し過ぎる役どころだ。

 

 女優・片瀬菜美の実の娘という話題性も手伝い、取材の申し込みがやたら多い。

 

智菜「もう疲れちゃったよ、伊集院さん。」

伊集院(マネージャー)「まぁまぁ、そう言わないでよ。智菜ちゃん。」

智菜「ママもこういうの耐えてんのかなぁ?」

伊集院「そうじゃないの?」

智菜「そうかぁ・・・」

 

 智菜の頭の中はまだまだ素人と同レベルだった。

 

 

 

 

 

 4月―。

 

 由奈は専門学校へ、智菜と由衣は短大へ入学した。

 そして、由紀と遥はすでに同じ予備校で勉強をはじめていた。

 

 

 

 

 

 某短大の校門前

 

 どこから見ても彼は浮いていた。

 学生はみんな女の子だけだし、小雨も降りはじめている。

 茶髪の頭をかきむしりながら、もう2時間も立っている。

 

和馬「今日はダメかなぁ・・・・・・」

 

 その時、今日の講義を終えたひとりの少女が走ってきた。

 智菜だった。

 

智菜「うわぁ、電車におくれるよぉーっ!今日は撮影の日なのに・・・・・」

 

 智菜は急いでいた。

 死ぬほど急いでいた。

 しかし・・・

 彼に気づくと足を止めた。

 

智菜「どうしたの、藤井クン。こんなところで・・・」

和馬「なんとなくぶらぶらと、来ちまったんだ。」

 

 そういう和馬の髪の毛と肩はすでにびっしょりと雨に濡れていた。

 しばらくここにいたのは明白の事実なのだ。

 智菜は笑ってしまいそうになるのを必死でこらえながら言った。

 

智菜「そんな暇があるんなら高校(がっこう)へ行ったら?」

和馬「やめたんだ。音楽にかけるためにね。」

 

 その時遠くから声がした。

 マネージャーの伊集院だった。

 

伊集院「智菜ちゃん、撮影の時間に間に合わないから送るよ。」

 

智菜「じゃ、またね。私仕事だから。またね、藤井クン。」

 

 そう言い残し、智菜は伊集院の呼ぶ方向へかけていった。

 

智菜「迎えに来てくれてありがとう。伊集院さん。」

伊集院「そんなのはいいんだけど、今のはいったい誰なんだい?」

智菜「1つ年下の・・・同じ学校だった子。

   たしか「BLUE」って名前のバンドを組んでるみたい。

   なんか最近、よく会うのよねぇ・・・」

伊集院「そうかい。」

 

 伊集院はスキャンダルを恐れていた。

 ドラマの放映中は役柄のイメージ上『おとなしい女の子』でいてもらわなくては

困るのだ。

 

 

 

 


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