ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第16話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 一方遥は・・・

 

 一通の手紙が届いていた。

 夕里からだった。

 夕里が東京の会社に就職したこと、麻人も東京の大学に入り、

 ふたりで暮らしていることなどが書かれていた。

 そして、最後に由奈といつまでも仲良くするように付け加えられていた。

 

 ベッドに寝転んで手紙を読みながら遥はつぶやいた。

 

遥「これからどうすりゃいいっていうんだよ、ユリ。

  由奈はもうオレの由奈じゃないのに・・・・・・」

 

 遥は絶望のどん底にいた。

 

うめ「遥やー、電話じゃよー。女の子から・・・」

 

 (女の子?誰だ?)そう思いながら、とりあえず体を起こした。

 

 

 遥はのろのろと階段を降り、電話に出た。

 

由紀―もしもし、遥クン、また由奈のこと考えてるんでしょう。

 

 電話先の声は、由紀だった。

 

遥「そんなこと・・・」

由紀―否定できないじゃない。仕方ないよね。ずっと想ってたんだもん。

遥「オレ、由奈のことあきらめられないよ。あんなんじゃ納得できない。」

 

 遥は興奮して話す。

 

由紀―でも、由奈がみちる君とつきあっているのは事実よ。

   みちる君は東京の音大に入ったし・・・、由奈も東京の専門学校へ

行ってるんでしょう?

遥「あぁ。」

 

 由紀の言葉に現実に戻されたかのように、遥は肩を落とす。

 

由紀―あきらめられないなら、もっとしっかりしなさいよ。

私があきらめた意味、なくなっちゃうよ。

遥「小泉・・・・・・ありがとう、オレ・・・」

由紀―あと、あしたのゼミは大切だから必ず出た方がいいわよ。

じゃぁね、切るわよ。

遥「あぁ、またな。」

 

 そしてふたりは受話器を置いた。

 

 

 

 

 

 そして由奈は・・・

 

みちる「由奈ちゃん、今度の土曜、映画見に行かない?」

由奈「あっ、私その日講義あるんだ。ごめん。」

みちる「じゃぁ、日曜は?」

由奈「検定試験が・・・」

みちる「いつならあいてるの?」

由奈「金曜の午後と夜中・・・それだけ。今忙しいんだよね。」

みちる「でも夜ならあいてるんだね。」

由奈「一応ね。」

 

 (言わなきゃよかった)

 

 最近、みちるのしつこい攻撃に由奈は疲れていた。

 朝も昼も夜中でさえもいっしょにいたがるのだ。

 しかし、由奈は学校の講義と検定試験のための勉強で精一杯で

みちるにかまっている暇はほとんどなかったし、

 そんな気分にもなれなかった。

 

由奈「みちる君・・・やっぱり当分会わない方がいいよ。

私、あなたをキズつけそう。

   今、精神的に疲れてて・・・・・・」

みちる「そんな時にそばにいるのが恋人じゃないのかい?」

由奈「ごめん、今はひとりになりたいの。」

 

 ふたりの仲はあまりうまくはいってなかった。

 だからといって、由奈は遥のもとへ戻る気にもなれなかった。

 自分自身で解決したいことがありすぎた。

 自分が母・真奈実の娘でないこと、亮にキスされたこと・・・・・・

 考え出すとキリがなかった。

 

 由奈は考え続けていた。

 自分の存在は何なのか、どうして真奈実があれほどまでに

事実をかくすのか・・・・・・

そして今、自分はどうすればよいのかを。

答えは出なかった。

いや、出そうになかった。

 

 

 

 


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