ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第10話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 一週間後―。

 

 由奈は香奈未(かなみ)の出るピアノ発表会の会場にいた。

 昔、習っていた由奈には今もピアノを続ける友人が何人かいた。

 その中でも仲がよいのが後輩の香奈未で、

 ほかには月岡満(みちる)と翔(かける)(高3・専門1)の兄弟,星野ひかる,

 倉田まゆ,柳瀬晃子(やなせこうこ)など数名である。

 ひかる,まゆ,共に短大の一年生で晃子は高1なのだが、みんな本当に仲がよく、

しょっちゅうカラオケなどに遊びに行っていた。

 

 ひかるはピアノを前にしている時以外は、恋多き乙女で手段を選ばない行動派。

 今つきあっている彼というのも200人目ぐらいで、しかも二股をかけている。

 

 まゆは暴走族とお友達で、学校ではおとなしいのだが、

 族のお兄さんたちといっしょだと、法律違反スレスレのことをいっぱいやって

しまう女の子。

 

 そんなふたりの得意な曲は、切ないバラード系の

感情をたくさんこめなければならない曲。

 

そして、晃子はいつでもどこでもまじめっぽいのだが、

ピアノの前に来ると踊りたくなるようなリズミカルな曲を得意とする。

 

そして香奈未は・・・

 案外お金持ちの家庭で育ったが、そんなところを見せない元気な子で、

 晃子よりひとつ上の高2。

 得意なのはバラード系の曲だが、

 ひかるやまゆのようなすばらしいほどの感受性はなく、そういう点では優れて

いた由奈に、昔からたよっている。

 

 

 

香奈未「先輩、来てくれたんですね。」

由奈「えぇ、まぁ・・・」

ひかる「あら、由奈じゃないの。元気だった?」

晃子「由奈さんですって?本当なのひかるさん」

香奈未「晃子ちゃん、ホントよ!」

まゆ「久しぶりじゃないの。1年近く会ってなかったわよねぇ。」

ひかる「そういやそうねぇ。」

由奈「でも、私、ひかるのことは見かけたよ。」

ひかる「どこでよぉ、由奈」

由奈「友達と横浜に行った時、男の人と歩いてた。」

ひかる「いつだろ?」

まゆ「ひかるの場合、男が誰だかわかんないもんねぇ。

この間、私も困ったもん。あの時はびっくりしたし・・・」

ひかる「いいじゃん、別に・・・」

まゆ「だけど、どう見てもあの人40過ぎのおじさんだよぉ・・・」

由奈「それだ!私が見かけたの・・・・・・」

 

 ひかるはちょっと気まずそうな顔をした。

 

ひかる「バイトなのよ・・・結構割のいいバイトなのよねぇ・・・・・・」

晃子「どんなバイトなんですか?ひかるさん。」

まゆ「あんたたちがやった方がお金にはなるけど・・・やっちゃダメよ。

ひかるじゃないんだから・・・・・・」

由奈「よーするに、キケンなバイトなのねぇ。」

 

 由奈は「またか」と思い、ため息をつく。

 

まゆ「そーでもないけど、晃子や香奈未にはできない・・・やれないなぁ。」

由奈「じゃ、私にはできるの?」

ひかる「由奈はやれるけど、やるなよぉ。

    あんたにはやらせたくない。私みたいなこと。」

由奈「どうして?」

ひかる「あんたは、一生きれいなままで好きな人といっしょになりなよ。

    キケンな橋はわたっちゃダメだよ!!」

まゆ「ひかる、そんな言い方すると誤解されるってば・・・」

ひかる「私のしてたバイトってのはねぇ・・・

    おじさんたちと、とにかくお茶することなのよ。

    それ以上はね、やっぱり私にもダーリンがいることだしぃー。

    いっつも彼に見張っててもらったの。

    こわいもん。どっかに連れてかれたら・・・・・・」

まゆ「でも、ひかるってば自分の彼へのごほうびを忘れるもんだから、

   どんどん振られちまってさぁ・・・・・・」

 

 「うん」とひかるはうなずいた。そして口を開いた。

 

ひかる「今は、ひとりだけなんだ。あそこにいる人なんだけど・・・」

 

 ひかるは指をさして言った。

 そのひとさし指の方向には、見覚えのある男が立っていた。

佐藤亮、その人だった。

 

 

 

 


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