ミステリーは止まらない

2.進 路

 

第9話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 夕食のあと瓔子に呼ばれ、遥は瓔子の部屋にいた。

 姉の部屋へ来るのはたぶん、10年ぶりくらいだろう。

 遥は緊張していた。

 

瓔子「遥、あなた、由奈ちゃんに責任のとれる行動をしてるんでしょうね。」

遥「どうして?」

瓔子「最後までは聞かなかったけど・・・、あなたたちの会話、聞いちゃったの。

・・・・ごめん。」

遥「・・・・・・。」

 

 顔から火が出るほど遥は恥かしかった。

 ふたりのきょうだいに由奈との出来事を聞かれてしまったのだから・・・

 

瓔子「あなたたちがカップルになるんじゃないかってことはわかってた。

でもね、こんなに早く、こんな時期にとは思ってなかったの。」

 

遥「・・・・・・」

 

 瓔子の言葉に反応する力もなく、遥は唖然としていた。

 

 瓔子の話はまだまだ続くようだった。

 

瓔子「別に、責任をとれる行動さえしてるんなら、姉さんは何も言わない。

   由奈ちゃんはいい娘だし、あんたと相性がいいのも知ってるもの・・・。

   でも、だからこそ、由奈ちゃんを困らせたり、泣かせたらダメよ。」

遥「オレってそんなに信用ないかなぁ。」

 

 遥はつぶやくように言い捨てた。

 

瓔子「そうじゃないけど、うちは母さんがあんな風だし、一応言っておかなきゃ

と思って。」

 

 やっと少し余裕が出てきた遥はこう返した。

 

遥「ところでさぁ、どこまで聞いてたの?」

瓔子「『これで消毒になるよ。』ってとこまで・・・」

遥「あちゃー。

じゃぁ、オレのファーストキスの瞬間、立ち聞きされちゃったんだぁ。」

瓔子「だって、たまたま部屋にいたら、隣から聞こえてきたんだもの。」

遥「兄貴になんかぜーんぶ聞かれちゃってさぁ。

オレ、ホントに穴があったら入りたいって。」

瓔子「まぁまぁ、そう言わないで。

   あっ、そういや映画の券もらったんだけど、行ってきたら?」

 

 そう言って瓔子は2枚のチケットを遥へと差し出した。

 

遥「ダメだよ。由奈はレベル高いとこ目指してると思うし、

オレはバカなんだから・・・」

瓔子「そう。ならやっぱり彼といっしょに行ってくる。」

 

 瓔子は遥に渡したチケットをぶんどるようにして、

エプロンのポケットに突っ込んだ。

遥は心の中で『最初っからそうしてくれ』と言っていた。

 

 

 

 


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