ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

2.進 路

 

第3話

Writer:立川ナツキ

 

 

 

 

数日後

  昼休み

 

 昼食を食べ終わると、ユナの足は屋上へ向いていた。

 

 学校で一番落ち着くのだ。なぜか屋上は。

 

 いつも何かあると、ここへきて空を眺めていた。

 

 が、ヨウが転校してきてからはここへ来ることはあまりなくなっていた。

 

 ユキに呼び出されて以来の屋上だった。

 

チナ「久し振りよね。屋上なんて。」

ユナ「そうね、やっぱここに来ると落ち着く。」

チナ「何かあったわけ?」

ユナ「空見ると落ち着く。」

 

 ユナは話をそらした。

 今日こそ言おうと思ったのだが、口を開けなかった。

 チナはそんなユナを見つめることしかできなかった。

 

チナ「別にいいわ。前にも言ったとおり、話したいときに話せば。

   久し振りの晴天よねぇ。」

ユナ「うん。冬になると、晴れても青空見えないもんね。

   ねっ、今度買い物しよう。」

チナ「そうね。いつ?」

ユナ「今度の日曜は?」

チナ「待ち合わせ場所は?」

ユナ「いつものとこに10時でどう?」

チナ「いいよ。わかった。」

 

 ユナは少し黙った。そして重い口を開いた。

 

 

 

ユナ「ねぇ、ファーストキスって大切よね。」

チナ「何、ヨウくんとでもしたの?」

ユナ「まさか。あのね、あのね・・・・・・。」

チナ「何?」

ユナ「奪われちゃった。」

チナ「誰に?」

ユナ「リョウさんに。」

チナ「無理矢理?」

ユナ「・・・・・・。うん。自分が許せなくて・・・・・・。」

 

 緊張の糸が切れたのか、ユナの顔がみるみるうちに涙で歪んでいく。

 

チナ「無理矢理なら、キスと思わないほうがいいよ。ぶつかったとでも思えば。」

 

 ユナがそんな風に思える娘じゃないことはわかっているけれど、

 チナは言葉がみつからない。

 

チナ「それでか、元気ないわけは。」

ユナ「うん。ヨウにどういったらいいのか。」

チナ「困ったよね。気にしなくていいと思うんだけど。」

ユナ「そうなんだけどね。どうしてもわりきれなくて。」

 

 チナは少し黙ったあとに口を開いた。

 

チナ「時間が解決してくれるんじゃない。リョウさんとはその後どうなの?」

ユナ「あの人になんて会いたくない。

家にはもう来てないらしいけど・・・・・・。」

チナ「なら、いいんじゃない。ま、元気出しなよ。」

ユナ「うん。なんかチナに話したらすっきりした。少し。

   ホントはね、ヨウとはこのままじゃいけないのよね。

   わかってるんだけど、甘えちゃって。」

チナ「少しずつ強くなっていこうよ。お互い。

   そうすれば少しは甘えなくなるんじゃない?そろそろ戻ろう。」

ユナ「そうね。」

 

 ユナとチナは教室へ戻っていった。

 

 

 

 


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