ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

1.由奈と遥

 

第25話

Writer:星野さゆる

 

 

 その日、遥は夕里の口から麻人とはかなり深い仲になっていることを聞いた。

 イヤな予感が当たってしまった遥は、

 とぼとぼと、自転車をひきずるようにして、

気がつけば町はずれの幼稚園の前まで来ていた。

 そこは遥と由奈が仲良く通った幼稚園だった。

 

 

遥「あの頃はよかったなぁ・・・・・・」

 

 遥がぼぉっと園舎を眺めていると、中から人影があらわれ、近づいてくる。

 

遥「小山せんせい!ゆかり先生!!」

 

 それは遥たちの担任をしていた先生だった。

 

ゆかり「どなた?園児なら帰りましたけど・・・」

遥「成宮遥です。ゆかりせんせい、おぼえていませんか?」

ゆかり「あぁーっ、遥くんね。大きくなったわねぇ、いくつ?」

遥「18才です。」

ゆかり「それじゃぁ、私も年をとるわけだぁ。」

遥「そんな・・・・・・」

ゆかり「由奈ちゃんも元気?」

遥「はい。」

ゆかり「よかった。ふたりとも仲良かったから・・・」

 

 ゆかりはにっこり笑って言った。

 ゆかりと会ったことで、遥はちょっびり元気を取り戻し、家へ帰ることにした。

 

 

 

 

 

成宮家で

 

遥「ただいまーっ。」

うめ「遥や、ちょっとおとなりまでおつかいに行ってくれないかのぉ。

   ばぁちゃん今、手がはなせないんじゃ。」

遥「・・・・・・」

 

 遥は無言で自分の部屋へと入っていった。

 

うめ「今日は腕によりをかけてとんかつを作っているんじゃ。

   手がはなせないんじゃよ。」

 

 いつもならすぐにおつかいへ行く遥だが、今日はそんな気分ではない。

 

遥「たまには兄ちゃんにたのんでくれよ!」

 

 遥の態度は冷たかった。ショックがまだ残っているのだ。

 麻人は手が早いので有名な、プレイボーイだった。

 その麻人の夕里に対する態度が違うのはわかっていた。

 だが、こんなにも早くに夕里をとられてしまうとは思っていなかった。

 「ユリ・・・オレの何がいけなかったんだ・・・」

 遥の頭も心もその言葉でいっぱいだった。

 ぐるぐるとまわっていた。

 

 そんな時だった。

 

信一「おい、ヨウ、TELだぞ。」

遥「えっ?」

 

 居留守を使おうかとも思ったが、兄の信一に強引に受話器を押しつけられた。

 

由奈―遥、元気?

遥「何だ、由奈かよ。」

由奈―何だはないんじゃないの?他人(ひと)が心配して・・・

遥「ごめん。」

由奈―でも、これくらいでへこたれるんじゃないわよ。

遥「わかってる。」

由奈―ふられたぐらい、相手が姉と結婚する私にくらべたらずっとましでしょう?

遥「そうだよな。」

うめ「遥、早くおつかいに行ってちょうだい。玉子が足りないの。」

 

 うめは遥の背中をつつきながら大声でせかす。

 

由奈―うちに玉子あるよ。おばあちゃんに言っといて。

遥「あ、あぁ。由奈・・・あのさぁ・・・」

 

 遥が急にどもりはじめる。

 由奈の頭の中は?マークでいっぱいになった。

 が、もしや・・・という想いも少しあった。

 

由奈―ん?

 

遥「あ、やっぱ明日にする。TELありがと。」

 

 

 

 


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