ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

1.由奈と遥

 

第22話

Writer:星野さゆる

 

 

遥「おはよ!由奈、片瀬さん。」

智菜「おはよ!遥クン。」

由奈「ちょっと遥、きのう黙りこんだのはいったい何なの?」

遥「別に・・・」

 

 その時、由衣 が由奈の袖をひっぱった。

 え、何?

 

 

 

 由衣にひっぱられるまま、由奈は化学室まできていた。

 

由衣「由奈、ちょっと話があるんだけど。」

由奈「何?」

由衣「あんたたち、ホントにつきあってないの?」

由奈「私に男がいるように見える?」

 

 ちょっと間をおいて由衣が話しはじめた。

 

由衣「由紀がふられたんだって?」

由奈「らしいわね。」

 

 由衣は驚いて早口になる。

 

由衣「誰に聞いたのよ。」

由奈「本人が言ってたわよ。遥、本人が。」

由衣「聞き出したの?」

 

 由衣の顔が険しくなる。

 

由奈「まさか。どうしてわざわざそんなこと・・・。」

 

 由奈は笑ってこたえる。

 

由衣「それなら、いいんだけど・・・」

由奈「話ってこれだけ?」

由衣「あ、うん。」

 

 (よくわかんない人だなぁ、由衣って。)と思いながら、由奈は教室へ戻る。 

 

 

 

 

 

その夜、高岡家には亮が遊びに来ていた。

 

亮「由奈ちゃん、ちょっといいかな?」

 

 ノックの音のあとに亮の声が聞こえた。

 

由奈「どうぞ」

 

 由奈は勉強をする手を止めて言った。

 

亮「理奈ちゃんはいつもバイトだね。」

由奈「いいえ。それを口実にしてデートしてるんです、お姉ちゃんは。」

亮「由奈ちゃんは高3だからねぇ。でも、好きな人とかはいるんでしょう?」

由奈「別に・・・これと言っては・・・」

 

 由奈は言葉をにごす。

 

亮「じゃあさっ、今度デートしない?たまには息抜きも必要でしょう?」

由奈「でも・・・」

 

 由奈は上手に断る言葉をみつけられずにいた。

 

亮「考えといてよ。」

 

 その時1階から声がした。

 

理奈「ただいまーっ!母さん、お客さんよぉー。」

 

 出かけていたはずの理奈の声だった。

 由奈はその客という言葉がひっかかってしようがなかった。

 雅人かも知れないと思ったのだ。

 そして、その予感はあたっていた。

 

理奈「由奈、あんたもおりてきてちょうだいよ。」

由奈「なによぉ。」

 

 理奈があらたまって茶の間に正座した。そのとなりには雅人がいた。

 

理奈「私、結婚します!!」

真奈実「何て言ったの、理奈。」

理奈「私、この人と結婚しますっ!!」

雅人「お父さん、お母さんよろしくお願いします。」

秋生「理奈、お前はいくつだ?」

理奈「ことしで20才(はたち)になりました。」

秋生「君は?」

 

 父さんは、雅人さんに話しかける。意外とおちついている様子だ。

 

雅人「19才です。」

秋生「今、何をしているのかね。」

雅人「専門学校でジャーナリストになるための勉強をしています。」

秋生「ダメだ、理奈。ふたりとも学生なのに、どうやって暮らすんだ?」

 

 私は黙っていられなかった。

 

由奈「父さん、お姉ちゃんたちを認めてあげて。浅井さんなんだから・・・」

 

 由奈は思わず泣きながら父親にうったえていた。

 自分をふった男と自分がふられることを知っていた姉・・・

 でも、だからこそ今はお似合いに思えていた。

 

 そして母さんも話し始めた。

 

真奈実「お父さん、人生は1度きりのかけだわ。18年前、私が舞台を捨てた時

あなたはそう言ったわ。理奈にもそういう時がきたのよ。」

由奈「父さん・・・・・・」

 

 

 しばらく父は考えこんでいた。

 茶の間は重い空気に包まれていた。

 

秋生「わかった。ただし・・・理奈、大学へ行きたいのなら自分で何とかしなさい。

   暮らすことで精一杯でも私は知らん。お前は大人なんだからな。

   雅人君、君は学校へ行きなさい。

   ご両親がなんと言うかわからんが、何と言おうと学校へ行きなさい。

   学費は私がだしてもいい。

   もちろんご両親が出してくれるのなら、それはそれでいいのだが・・・」

 

 姉さんと雅人さんの結婚はこんな風にトントン拍子で決まった。

 そして、姉さんは大学をやめて就職した。

 9月の終わりの日のことだった。

 

 

 

 


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