ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

1.由奈と遥

 

第21話

Writer:星野さゆる

 

 

再び由奈の部屋

 

智菜「おかえり、由奈。待ってたよぉ。」

由奈「なんだか疲れちゃった。」

 

 遥の恋愛話を聞かされ、なんとなく疲れてしまっていた。

 遥が由紀とうまくいってもいかなくても、遥に彼女がいてもいなくても

 関係ないのにと思っていた。

 

 「とりあえず宿題やろう!」と言うつもりだった智菜だが、由奈の様子を見て

その言葉は言わないことにした。

 

由奈「智菜、人間って疲れるね。」

智菜「でも、がんばろうよ。ねっ。」

由奈「そうだね。」

 

 その時、智菜のポケベルが鳴った。

 『ピーピーピー・・・』

 

智菜「パパからだ。」

 

 智菜の表情がパッと明るくなる。

 

由奈「何て?」

 

 一転、智菜の表情が暗くなる。

 

智菜「行かなくっちゃ!これから3人でお食事だって。

これが最後になると思うけど・・・」

由奈「行くの?大丈夫?ついて行こうか?」

 

 こんな表情されたら・・・心配でたまらなくなる。

 

智菜「大丈夫。由奈、ありがとう。由奈の方こそ大変なのに・・・」

 

 智菜も精一杯由奈を気づかう。

 

由奈「じゃぁ、気をつけてね。いつでもうちは来ていいから・・・。」

 

 そして1階に向かって大きな声で言う。

 

由奈「母さん、やっぱり智菜が帰るってー!!」

 

 真奈実が台所から走ってきた。

 

真奈実「いつでも遊びに来てね。智菜ちゃん、何もできなくてごめんなさいね。」

智菜「いいえ、おかまいなくぅ。突然お邪魔して、すみません。」

由奈「気をつけてね。じゃ、明日ね。」

 

 そう言って由奈は智菜とわかれた。

 

 

 

 

 

その夜、智菜はホテルのレストランで菜美と智と食事をした。

 

智「智菜、落ち着いて聞いてくれ。」

 

 智が神妙なおももちで切り出した。

 

智菜「うん。」

菜美「さっき、あなたがここへ来る前に、離婚届を出して来たの。」

 

 続いて菜美が話しはじめる。

 

智菜「ふ〜ん。」

菜美「智菜、週刊誌のことならウソよ。弓月さんとはお友達になっただけ。」

智菜「そう。」

 

 智菜はできるだけ感情を出さないように、そっけなく答える。

 

智「でも、パパは昔のようにママを愛せなくなってしまったんだよ・・・。」

智菜「どういうこと?」

菜美「私も昔のままではいられない・・・。

   だから、お互いに別々のところでがんばりましょうって。」

智菜「そう。ありきたりな言い訳ね。本当は、私が原因なんじゃないの?」

 

 智菜はイライラしたように言う。

 

智&菜美「どうして、そんな・・・」

智菜「私が原因なのはわかってるのよ。パパとママのバカ!」

 

 智菜は最後ぐらい本当のことが聞きたかった。

 

智「智菜、どういうことだ?」

 

 智は不思議そうに智菜の顔をのぞきこむ。

 

智菜「私は弥生さんとパパの間にできた子供なんでしょう?」

 

 智菜が興奮して言う。

 

菜美「もしかして、あなた、私たちのケンカを聞いてた?」

 

 智菜はコクリとうなずく。

 

菜美「ごめん、智菜!私、昔からの癖で台本の中のセリフとか、ケンカ中に

ボンボン出ちゃうのよ。

それに今やってるドラマのライバル役が弥生って名前なの。」

 

 『そんなはずないじゃない』と思う智菜だったが、

  智の言葉でそうだと納得するよりないのだと思った。

 

智「菜美がケンカ中に現実と台本をごっちゃにするのは、中学生の頃からなんだ。

  その当時からの知り合いというのが、ほら、高岡さんのお母さんでね・・・」

菜美「真奈実は演劇部一の女優だった。そして、優しすぎた。

   だから、家庭へ入ってしまったの。」

 

 菜美は遠い目をして昔のことを話しはじめた。

 この普通でない状況で飲みすぎてしまったのかも知れない。

 

智菜「じゃぁ、由奈と私が親友なんだから、親子で親友どぉしってこと?」

 

 菜美は暗い顔で首を振る。

 

菜美「早乙女由香梨の死よ。どうして由香梨と自分の夫の間に生まれた子供を・・・。

   由香梨がいなければ、真奈実は舞台女優を続けていたはずだったのに。」

智「そこらへんでやめないか、菜美。智菜とは関係のないことだ。」

 

 智は菜美を制する。

 菜美ははっとしたように、話を止める。

 そして話題を変える。

 

菜美「そうそう、今日から私は新しい部屋に引越したの。智菜ともお別れね。」

智菜「ママ・・・・・・」

 

 そこから先は声にならなかった。

 実の親だとわかった今、なぜふたりが別れてしまうのか、

 智菜にはわからなかった。

 そして、涙だけがこぼれ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日

 

智菜「おはよう!由奈、元気?」

 

 いつもの智菜だった。うるさいくらいに元気な。

 

由奈「智菜、無理しなくていいよ。」

 

 智菜はニコリと笑って言った。

 

智菜「ううん、私、ママの子供だったの。

そりゃぁ、ふたりは別れちゃったケド・・・悲しくないもん。」

由奈「じゃぁ聞くけど、どうして別れんのよ!」

 

 由奈は怪訝そうに聞く。

 

智菜「よくわかんない。

   ママったら、きのうは酔っちゃったみたいで昔話のオンパレード。

由奈のお母さんのこととか話しはじめちゃって、長いったらないのよ。

なんか大人ってよくわかんないよ。」

 

 とりあえず智菜が元気なので由奈はほっとしていた。

 

 

 

 


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