ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

1.由奈と遥

 

第16話

Writer:星野さゆる

 

 

 そこへ遥が通りかかった。

 彼はいつものように自転車に乗っていた。

 

遥「よぉっ!片瀬さん」

智菜「あっ、遥クン。由奈のことよろしく。私、行くとこあるんだ。」

 

 そういって智菜は走り去った。

 

遥「えっ?あ、おいっ、由奈。何やってんだよ。」

由奈「よーうーっ。」

 

 由奈はいきなり遥の胸に抱きついた。

 ガチャーン!

 驚いて手を放したため、遥の自転車は道路に転がった。

 それから2時間、由奈は泣いていた。

 やっと泣きやんだ由奈に遥は言った。

 

遥「また、何かあったのか?」

由奈「私の実のお母さん、わかっちゃった。・・・智菜が知ってた。」

遥「えっ?あのさ、とりあえず座って話さないか?ほら、そこの公園で。」

 

 自転車を起こしながら遥は目の前の公園を指さした。

 遥はベンチのとなりに自転車を停めると、由奈をベンチに座らせ、その隣に

 座った。

 

遥「座った方が少しは落ち着くだろう?」

由奈「うん。」

遥「お前、色々ありすぎて本当に大丈夫か?」

由奈「今のところはね。ただ・・・」

遥「ただ、なんだよ。」

由奈「ごめんね、遥。いつも迷惑かけて。」

遥「バーカ。オレとお前の仲だろう?遠慮するなよ。」

 

 遥は由奈が落ち着きをとり戻すまでそばにいた。

 そして夕陽が落ちるころ、言い出した。

 

遥「今日は帰ろうぜ。もう暗くなるし・・・」

由奈「うん。ホントにごめん。」

遥「後ろに乗れよ。」

 

 遥はそう言って自転車に乗った。

 由奈は何も言わずに後ろに乗った。

 

遥「しっかりつかまってろよ。飛ばして帰るから。」

由奈「わかった。」

 

 由奈は遥のおなかに手をまわした。

 「遥なんだ。」そう実感してすっかり安心した由奈は、

 そのまま遥の背中にもたれかかるようにして眠ってしまった。

 

遥「おいっ!由奈、落ちるなよ!!」

 

 遥はそう言いながらスピードを落とした。

 

 

 そんなふたりを見ていた人間がいた。

 その人間の名前は小泉由紀。

 ふたりの通った道沿いに彼女の家はあった。

 彼女は遥のことが好きだった。

 

由紀「あれは・・・どうして由奈と遥クンがあんな風にして・・・」

 

 彼女は窓から見えたその人影を由奈と遥だとわかっていた。

 そして彼女には、由奈の眠っている格好がイチャついてるように見えていた。

 由紀の中で由奈への嫉妬心がメラメラと燃えはじめていた。

 

 

 

 


Copyright 2004 立川ナツキ&星野さゆる. All rights reserved.

Never reproduce or republicate without written permission.