ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

1.由奈と遥

 

第15話

Writer:星野さゆる

 

 

そんなある日のことだった。

由奈は智菜がめずらしくカラ元気じゃなかったのが、朝から気になっていた。

 

由奈「智菜、どうしたの?めずらしいじゃない静かなの。」

智菜「そうかなぁ。でもね、私、パパとママのケンカを聞いちゃったの。」

由奈「・・・・・・」

智菜「私、ママが家に帰ってこないのが多すぎるとは思ってたケド・・・」

由奈「智菜、落ち着いて!!」

智菜「ママに、ママに・・・男がいたのよぉー」

 

そのまま智菜は泣き崩れた。

 

智菜「最近ふたりとも家にいないことが多かったけど、仕事のせいだと信じてた。

なのに・・・」

由奈「智菜・・・。」

 

自分もいろいろややこしいことがあったにも関わらず、智菜のことを考えると

心が苦しい由奈だった。

 

 

 

 

 

 智菜の母で女優の片瀬菜美は共演者で30歳の弓月馨(ゆづきかおる)と

 男女の関係になっていた。

 それを昨夜、夫の智に打ち明けてケンカとなったのだった。

 話はそれだけでは終わってはいなかった。

 菜美は智菜は自分の娘ではないと言い出したのだった。

 

菜美「あなたが悪いのよ!新婚当初から若い使用人の女性がいるなんて

   不思議だったのよ。ずっと・・・」

智「そのことは・・・」

菜美「智菜は私の子じゃないのよ。

あなたは知らなかったかも知れないけれど・・・」

智「どういうことなんだ。」

菜美「弥生さんの子よ。」

智「何だって?」

菜美「私が流産した日だった・・・・・・

病院で弥生さんと会っちゃったの。」

智「・・・・・・」

 

 菜美は昔をふりかえるようにして話しはじめた。

 

菜美「ショックだった。たまたま予定日が同じ日だった。だから・・・

   弥生さんにたのみこんだのよ。私の身代わりになってって・・・」

智「何てことを・・・」

菜美「あなたとの子供がほしかった。私の方をふりむいてほしかった。

   あなたは気づかなかった。17年以上も。

   だけど、私をふりかえってはくれなかった。

   智菜にそそがれる愛情の少しでいい・・・私に向けてほしかった。

   弥生さんへの愛情の少しでいいから私に・・・。」

智「菜美・・・もういい。もうオレたちだめなんだな。やり直せないよな。

  こんなに何もかもが食い違っていたなんて・・・・・・。」

 

 「今でも愛してる」という言葉を菜美は飲み込み、自分の部屋に戻っていった。

 

 そして、その全てを智菜は聞いてしまっていた。

 

由奈「私も母さんが違うらしいのよ。

   亮さんと母さんが話してるのを聞いちゃったの。」

智菜「・・・・・・」

 

 智菜はずっと黙ったままだった。

 

由奈「実の母親が誰かわかんないけど、母さんは話してくれないから。」

智菜「ごめん。ずっと黙ってたけど、

   おばさんがあんたのお母さんじゃないらしいことは知ってた。」

由奈「えっ!どうして・・・・・・」

 

 由奈は固まってしまった。

 

智菜「ママから聞いたことがあるの。

あんたのお母さんは、早乙女由香梨(さおとめゆかり)って人。

このあたりじゃ有名な人だったって・・・。

   あんたのお父さんの幼なじみで、ママ達の同級生だったって・・・」

 

 由奈はまるっきり何が何だかわからなくなってしまった。

 

智菜「でも、あんたを生んですぐに死んじゃったんだって。

   あんたのお母さんと仲が良かったらしいから、

   自分が許せなかったんじゃないかなぁ。」

由奈「でも、どうして私は高岡家にいるわけ?」

智菜「なんかママの言ってた話では、

   あんたのお母さんが「ひきとる」って騒いだって。」

由奈「母さん・・・・・・」

 

 由奈は涙が止まらなくなった。

 ポロポロといつまでもこぼれ続けた。

 

 

 

 


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