ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

1.由奈と遥

 

第13話

Writer:星野さゆる

 

 

 その日の夕方だった。

 突然ひとりの若い男が高岡家をたずねた。

 彼は自らを佐藤 亮(さとうりょう)と名乗った。

 そして、由奈に言った。

 

亮「僕は気味ときょうだいなんだ。父親はちがうけどね。」

由奈「何いってるんですか?」

 

 何、この人?

 

亮「僕の父さんは1ヶ月前に死んだ。

母親は僕を生んですぐに死んだと言われていた。

でも、ちがったんだ。調べたんだから。」

由奈「ドラマみたいなこと言わないで下さい。」

 

 もしかしてちょっとおかしい人なのかしら?

 いきなりわけわかんないこと言ってきて。

 

亮「市役所で調べたんだ。母親の名は高橋真奈実とあった。

  生年月日も何もかも君のお母さんといっしょだったんだよ。」

 

 え?どういうこと?

 

由奈「それは、ホントに本当なんですか?」

亮「父さんの【遺品】の中の写真にもうつっていた。」

由奈「そんな・・・・・・」

 

 もしかしてこの人の言ってることは本当のこと?

 なら落ち着かなきゃ。

 

亮「僕は君たち一家を困らせたくはない。

  僕だって23歳のれっきとした大人だからね。

  ただ、一度だけ母さんに会わせてくれないかい?」

 

 動揺する気持ちをおさえ、由奈は言葉を続けた。

 

由奈「話したのが私でよかったわね。姉さんだったらダメかも知れないもの。」

亮「じゃ、君は由奈ちゃんの方かい?そっか。

君が由奈ちゃんの方でよかったよ。本当に。」

由奈「家にあがって。今、母さんは買い物に行ってるケド・・・・

玄関先じゃなんだし、お茶くらいはいれるから・・・。

   もうすぐで戻ってくるし・・・。」

 

 私は「何かわけのわからないことばかりおきるなぁ」と思いつつも

 心を落ち着かせ、お茶をいれていた。

 

真奈実「ただいまー!由奈、お米といでてくれたぁ?」

由奈「おっかえりー。ちゃんとやっといたよ。

   それよりお客さんが来てるんだけど・・・」

真奈実「もう、由奈ったらそれ早く言ってよ。」

由奈「それがね、私が色々ドジふむたびにたすけていただいてる人なの。」

 

 由奈は嘘をついた。それが家族のためと思った。

 しかし・・・

 

 

 

 

 

真奈実「亮・・・亮なんでしょ?なぜここに?」

由奈「どうしたの、母さん。」

亮「はじめまして。由奈チャンとは仲良く・・・」

真奈実「あの人が亡くなったのは聞いていたケド・・・

    あなたがこんなにりっぱになってるなんて・・・」

 

 お茶を運んでいった由奈の瞳に映ったものは立ちつくしている

 真奈実の姿だった。

 

由奈「母さん、どうしたの?」

 

 驚愕のあまりに立ちつくす真奈実を、由奈はゆり動かしながら言った。

 

真奈実「理奈には言っちゃダメよ。

    母さんあんたたちにはかくしていたんだけれど、

    昔・・・父さんと出逢う前に子供をうんだの。」

由奈「父さんは知ってるの?」

 

 衝撃が走った。

 母のから口から出てくる言葉で現実なのだと確信するよりなかった。

 

真奈実「えぇ。その上での結婚だった。」

亮「その子供が僕なんですよね。」

真奈実「まちがいないわ。その額のキズは

    あなたが6ヵ月の時にころんでついたもの・・・」

亮「じゃぁ、ずっとおぼえていてくれたんですね。」

真奈実「はじめての子よ、おぼえてるわ。もちろん。」

由奈「それじゃぁ、本当にきょうだいなの?私たち」

真奈実「え、えぇ、まぁそうね。」

 

 

 

 

 

 その後、亮は日曜日などに遊びに来るようになった。

 しかし・・・

 私はふたりの秘められた会話を聞いてしまった。

 

亮「どうして由奈ちゃんにあのことを話さないんですか?」

真奈実「私にはできない・・・」

亮「いずれは知ることでしょう?」

真奈実「だけど、せめて受験が終わるまでは・・・」

亮「嘘をつかれて生きる子供が、

  その嘘を知ったときどれだけショックかわかりませんか?

  由奈ちゃんに実のお母さんのことを話してあげて下さい。」

 

 「どういうこと?」

 私の頭の中は?マークでいっぱいになった。

 頭の中がごちゃごちゃだった。

 

 

 

 


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