ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

1.由奈と遥

 

第12話

Writer:星野さゆる

 

 

  片瀬家・食堂

 

倫子「おじょうさま、だんなさまからお電話です。」

 

 そう言って住み込みで働いている倫子が、智菜にコードレスフォンを手渡した。

 

智菜「もしもし、パパ?」

智―智菜か?大事なお客様がみえていて、今日は帰れそうにないんだ。

智菜「そう。お友達が泊まりに来てるの。心配しないで。」

智―お友達によろしくな。

 

 智菜がTELを切ったその時、ベルが鳴った。

 

智菜「もしもし、片瀬でございます。」

菜美―智菜ちゃん、ママ仕事がおそくなっちゃって・・・明日は帰るからね。

智菜「こっちは大丈夫だから。」

菜美―そう?

智菜「大丈夫だってば!!」

 

 智菜は一方的にTELを切った。

 

 由奈はそのやりとりにびっくりして何も言えなかった。

 

弥生「おじょうさん、今日のメニューはすごいですよぉ。

   な、なんと・・・焼肉です。」

智菜「ってことは・・・ね、倫子さんと弥生さんもいっしょに食べましょう。

   ふたりで食べてもつまらないし・・・由奈もそうでしょう?」

由奈「えぇ。」

 

 

 由奈は智菜がどんなに強がっていても、両親と食事がしたいということが

 わかった。

 そして、そんな智菜がかわいそうだった。

 食事をしながらも智菜がいつも、どれだけ淋しいのかを考えると胸が痛んだ。

 

 

 

 その日、由奈は片瀬家に泊まり、次の日の昼頃になって自宅へと戻った。

 理奈は今日からサークルの合宿らしく、登山の用意をして出ていった

 あとだった。

由奈は少しほっとしながらも、理奈が帰って来る日のことを思うと憂鬱だった。

 

 

 

 

 


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