ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜
1.由奈と遥
第10話
Writer:星野さゆる
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今日は理奈の顔を見る勇気がなかった。 そして、近くに見つけた電話BOXから智菜の家へとダイヤルした。 由奈「もしもし、片瀬さんのお宅でしょうか?」 お手伝いさんA「はい。」 由奈「高岡と申しますが、智菜ちゃんいますか?」 お手伝いさんA「お嬢さんならお部屋にいらっしゃいます。ただ今おつなぎします。」 智菜「もしもし?」 由奈「今からそっちに行ってもいいかな?」 智菜「いいよ。どうしたのよ?」 由奈「家に帰りたくないんだ・・・・・・」 智菜「どうしたのよ・・・ホントに。」 由奈「あとで話すよ。」 智菜の家―。 『ピンポーン』 チャイムを押すが、誰も出てこない。 由奈は少しいらいらしはじめながら、もう一度チャイムを鳴らす。 お手伝いさんB「はーい。」 由奈「すみません、智菜ちゃんは?」 お手伝いさんB「電話のお嬢ちゃんだね。お嬢さんなら部屋にいますよ。」 由奈「はい」 お手伝いさんB「お嬢さん!!お友達ですよぉーっ!」 智菜「弥生さーん、もう少し静かに呼んでくれないかしら。びっくりしたでしょう? こちらは弥生さんっていって、私の育ての母みたいな人なの。」 お手伝いさんBこと弥生「まぁ、いやですよ。お嬢さんたら。」 そう言って彼女は智菜の方をどついた。 智菜「とにかくさぁ、部屋で話そうよ。弥生さん、飲み物おねがいね。」 弥生「はい、はい。」 智菜の部屋―。 由奈「・・・・・・。」 智菜「どうしたのよ、いきなり。」 由奈「私、失恋しちゃった。」 智菜「えっ?」 由奈「失恋しちゃったの。」 智菜「好きな人いたの・・・?」 由奈はコクンとうなづいた。 そして、浅井のことを知るかぎり話した。 由奈「夏休みにね、手紙を書いたの。『好きです』って。でも・・・」 智菜「でもダメだったんだ。」 由奈「うん。でもそのことより・・・ 雅人さんの好きな人がわかっちゃったことがつらいの。」 智菜「・・・・・・。」 由奈「私の手紙をわたしてくれたのは、姉さんなの・・・ なのに彼の好きな人は姉さんで・・・・・・ つきあってることも、ふたりとも私には・・・・・・」 智菜「もう何も言わなくていいよ。 家には私がTELしておくから、今日は泊まっていきなよ。 私、きょうだいっていないから由奈がいてくれるとうれしいし・・・」 由奈「ありがと、智菜。」 智菜「でも・・・遥クンには話しておいた方がいいんじゃない? 最近あんたが元気ないから心配してたよ。」 由奈「知ってる。」 その時、由奈は思い出した。 左手ににぎりしめていた袋の中身を・・・ その袋は半日にぎりしめていたせいでぐちゃぐちゃだった。 しかし、中身のピアスはキズひとつなく由奈のてのひらの上で輝いた。 由奈はピアスをもう一度にぎりしめると、遥をぶってしまったことを思い出した。 「どうしよう・・・遥は何も知らなかったのに・・・」 そんな思いが頭をよぎった。 由奈「智菜、どうしよう。こっちの都合で、何も知らない遥をぶっちゃった。」 智菜「あんた・・・とことんバカだねぇ。」 由奈「そんなこと言ったって・・・・・・」 智菜「ほれ、遥クンからのFAX。」 智菜「家にいないから、私のとこだと思ったんだって。」 由奈「どうしてわかっちゃうの?」 智菜「いいから読みなさいよ。」 ―由奈へ 何だか知らないケド、またぶたれたなぁ。オレ。 前にぶたれたのは北海道に行く直前だったよな。 オレ、あの時のことはぜったいに忘れないもんなぁ。 お前がぶつ時って必ず意味があるのはよくわかってる。 でも、いきなりだからいつもオレは困るよ。 理由は聞かないけどさ、何かあったんだろう? 無理に元気にすることないから、少しずつ元気になれよ。 とにかく、何かオレが悪いコト言ったんだろう? ゴメン・・・ 成宮 遥― FAXの文面はこんなものだった。 |
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