ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

1.由奈と遥

 

第4話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 成宮家は父・正夫,母・夕子,長女・瓔子(20歳),長男・信一(19歳)

 そして次男の遥(よう)(18歳),祖母・うめの6人家族。

 正夫は会社員、夕子はエッセイストとして共働きの家庭だが、祖母のうめが

 元気なので何一つ困ることなく暮らしてきている。

 

 

 

 

由奈「ねぇ、遥。」

遥「何?」

由奈「後ろに乗っていい?」

遥「お前、重くなってそうだなぁ。」

 

 遥は笑いながら言った。

 

由奈「ふーんだ。どうせおデブですよーだ。」

 

 由奈が少しすねて見せると、遥は仕方がないなぁという表情で言った。

 

遥「わかったよ。ただし、家までだからな。」

由奈「やった!!」

 

 遥の背中につかまりながら、由奈はつぶやいた。

 

由奈「こうしてると昔といっしょなのになぁ・・・」

遥「何かいったか?」

由奈「ううん、昔もこうしてたなぁって・・・」

遥「そうだな。」

 

 そう返事して、遥は赤くなった。

 

 

 

 

 

智菜「あっ!ちょっとぉ、由奈ーっ!!」

 

 由奈に置いていかれ、ひとりで買い物をすませた智菜が

 自転車の後ろに乗っている由奈をみつけたのだ。

 

遥「友達か?」

由奈「うん。」

遥「呼んでるぞ。」

由奈「あとで電話するからいい。」

遥「本当にいいのか?」

由奈「今日は早く帰りたい気分なの。」

遥「ケンカしてもオレのせいにすんなよ。」

由奈「大丈夫だってば。」

遥「じゃ、飛ばすぞ!」

 

 遥は由奈の返事を待たずに自転車を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 次の日は、登校日だった。

 

 智菜は沸騰したやかんの勢いで話し始める。

 

智菜「昨日の彼は誰なのよっ!!」

由奈「あっ、あれねぇ。」

智菜「あんたが抜けがけしてたなんて・・・・・・」

由奈「ちょっと智菜ってば。声が大きいよ。

   あれはねぇ、うちのトナリの人だってば。

   智菜には話したことなかったっけ?遥のこと・・・」

由紀「ちょっとちょっと?由奈ってば、今、遥クンって言った?」

由奈「あちゃーっ。ユキ、まだ好きだったの?」

由紀「遥クンのこと忘れた日なんてないわぁ・・・」

由奈「ユキにはよろこばしいできごとね、それじゃぁ。

   遥が戻ってきたのよ。この街に。」

 

 由紀こと小泉由紀はよろこびのあまりパニックにおちいっている。

 そんな由紀を見て彼女の親友秋山由衣は内心、また面倒なことに

 なったと思っていた。

 由紀は感情的になりやすい性格なのだ。

 

智菜「遥クンって誰?」

由奈「私のおさななじみで・・・ユキの想い人ってわけ。」

 

 この時の私には、後の面倒なことなど、みじんも考えられなかった。

 

 

 

 

 


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