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Anniversary

記念日2:雨の桜並木 中編


 すぐにわかった。
 それがあの日の女の子だと。
 おかっぱだったサラサラの黒髪は、以前よりも長く肩まで伸びていたが、
 白い肌もばら色のほおも、あの日のままだった。
 紺のスモックを着ていても彼女は誰よりもかわいい。

 気づくと立ち上がって彼女の前まで行ってしまっていた。

「ゆなちゃん、でしょ?」

 彼女はひまわりのような笑顔でオレをむかえてくれた。

「あ・・・ようくん!」

 おぼえていてくれたんだ・・・

 さっきまでの暗い気持ちが嘘のように、オレの気持ちは晴れわたっていった。





「ゆなね、今日はおリボンしてもらったんだよ!ママがしてくれたの。」

 にっこり笑って彼女は自分の頭を指さす。
 彼女の髪の右サイドには細い三つ編みがしてあり、水色のリボンがつけられていた。

「とってもかわいいよ、ゆなちゃん。」

 それだけ言うのがやっとだった。
 だって彼女はその笑顔も、姿もかわいかった。
 息が止まりそうになるほどに・・・。

「ありがとう!ママにも言ってくるねー。ママー・・・」

 彼女は彼女の母親の元へと走っていった。
 オレはそのうしろ姿を見送りながら、思った。

 泣くのガマンしてよかった・・・・





「ママ、ようくんがおリボンかわいいって言ってくれたぁ!」
「あら、もうお友達ができたの?」
「ううん、ようくんとは前からおともだちだよ?」

「ようくーん」

 少しすると、彼女はパタパタと走ってまたオレの前に戻ってきた。

「ゆな、ようくんとおともだち、だよね?」

 夢じゃ、ないよね・・・・

 まるで夢の中のできごとのように思いながらオレはこたえた。

「うんっ!!」




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