ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

3.解けない謎

 

第16話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 電話があったのは1時間前。

 そろそろ多恵子は来るだろう。

 しかし・・・

 あの多恵子が理解してくれるだろうか?

 リカはだんだん不安になってきていた。

 学校ではミーハー根性丸出しの多恵子。

 今日の電話では少しイメージが違っていたけれど・・・

 この複雑な状況を全て話してしまったら、ややこしくなってしまうのでは

 ないだろうか?

 リカの不安をよそにチャイムが鳴り響いた。

 

 ピンポーン

 

「はーい」

 

多恵子「おひさ!元気だった?」

リカ「ん〜、私は元気よ。まぁあがって。」

多恵子「じゃ、遠慮なく〜。あ、これおみやげ」

 

 そういって多恵子はリカに小箱を渡す。

 

リカ「や〜ん、なんで私の好物知ってんの?私、このプリン大好き☆」

多恵子「よかった!」

 

 

 

リカ「話したいことって何?」

 

 多恵子の持ってきたプリンと淹れたばかりの紅茶を多恵子にすすめながら、

 リカは話を切り出した。

 

多恵子「実はね、今日佳代と清香がうちに来たの。突然でびっくりよ、もぉ。」

リカ「そりゃ、びっくりよね。」

 

 私も多恵ちゃんから電話きて、びっくりだったし・・・

 

多恵子「ごめん、リカもびっくりしたよね。」

リカ「う、うん。まぁね。」

 

 なんでわかっちゃったのかしら。

 

多恵子「ふたりが由奈の送別会をしたいみたいなの。」

リカ「送別会かぁ・・・・・・」

 

 送別会、できるのかなぁ・・・・・・

 

 そう思うと、リカはため息をつかずにはいられなかった。

 

多恵子「やっぱり、由奈元気になってないの?」

 

 リカは何も言わず、もういちど大きなため息をついた。

 

多恵子「私、由奈のお母さんの告別式も出れなかったし・・・

    よくわかんないんだけど、由奈の様子はどうなの?」

 

 リカは大きく深呼吸をした。

 

 本当に多恵子なのかしら?

 ミーハー多恵子がこんな表情(かお)でこんなこと気づくのだろうか?

 

リカ「本当に多恵子?SMAPファンの多恵ちゃん?」

多恵子「本物だって・・・。やっぱりお母さんのコトがショックで落ち込んで

    るのね、由奈は・・・」

リカ「何か、今日の多恵子いつもと違うね。全部、話すね。」

多恵子「うん、話してよ。友達でしょ!」

 

 

 

リカ「由奈、大学に行かないかも知れない。ううん、正確には行けないかも

   知れない。」

多恵子「どーゆーこと?由奈、合格したんだよね。」

 

 リカは静かにうなずいてつづけた。

 

リカ「合格はまちがいないよ。でも、あの調子ではね・・・・・・」

多恵子「そんなに落ち込んでるの?」

リカ「・・・・・・」

多恵子「よっぽどお母さんのコトがショックだったのね・・・。」

リカ「そうね。」 

 

 しばらく、ふたりは声が出せなかった。

 由奈のことを思って静かに涙を流した。

 

 

 

 


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