ミステリーは止まらない〜鎌倉・由奈伝説〜

3.解けない謎

 

第25話

Writer:星野さゆる

 

 

 

 

 友人たちのはげましによって、なんとか立ち直った由奈は、

 せっせと引越しの準備をすすめていた。

 しかってくれたリカと多恵子にも、そばにいてくれた遥にも、

 由奈は感謝していた。感謝の気持ちをあらわすには、

 とにかく前向きに過ごすのが一番だと思っていた。

 が、もうひとつ胸のつかえがあった。

 そのことに気づいてはいたのだが、忙しさにかまけて

 由奈は無視をしつづけていた。

 いや、忙しくなくても由奈は無視したのかも知れない。

 その胸のつかえは智菜と仲直りしていないことだったから。

 

 

 

 

 

 智菜はずっとふさぎこんでいた。

 仕事は順調だった。

 和馬との仲もうまくいっている。

 彼の仕事もうまくすべりだしている。

 幸せなはずだった。

 父と母の離婚で家庭はこわれてしまったが、今の智菜には打ち込めることが

 たくさんあった。

 しかし心に穴があいたようだった。

 あの日の由奈の言葉が何度も頭をぐるぐるまわる。

 『由奈に絶交されてしまったんだ』という現実だけが、智菜の前にあった。

 どうしたら許されるのかわからなかった。

 何しろ由奈があんな風に怒るのは、はじめてのことだった。

 あやまっても、言い訳にしかならないように感じられた。

 

 

 

 


Copyright 2005 星野さゆる. All rights reserved.

Never reproduce or republicate without written permission.